走って走って、学校につく、時計を見る、ああ、もう私の足じゃ間に合わない。
私は立ち止まる、するとジローも向日くんも止まった。

「二人は行って、私、も、無理」

そう言ってジローの手を離そうとすればジローはぎゅうと私の手を握った。
私はびっくりしてジローを見る。

「じゃあ俺もサボるC」
「あ、狡いぞ、俺もサボる!」

二人してニッと笑った、ああ、眩しすぎるよ二人とも。
二人なら走れば間に合うのに、私なんかに付き合うことないのに。
私はほんとに気にしないでと言えばジローは気にしてなんかないCと笑った。
嘘つき、気にしてくれてるくせに。
ありがとう、二人に呟くと二人は私の頭をぐしゃりと撫でた。
ああ、私なんて幸せものなんだろう、涙が零れてしまいそうになったが、涙を飲み込む。
二人は歩き出す、私も二人に追いつこうと走った。
先生に会わずに屋上につけばもうそこは楽園…なはずなかった。

「寒!」
「俺は寝れるC」
「はあ?まじかよ」

冬の屋上は異様に寒かった、太陽は雲に隠れて見えなかった、ああ、寒いよ。
とんとんとん、肩を叩かれ振り向くと向日くんがこいつまじで寝てるぜ、と笑っていた。

「ジローはどこでも、寝ちゃうから」

そう言って笑うと向日くんはなにか言いたげな顔をした。なに?聞くと向日くんは言った。

「なんか妬ける」
「え」

意味がわからないよ、焼ける、やける…妬ける。
妬けるって嫉妬したってこと?私は何が?と聞いてみた。
すると向日くんは言った。

「俺のことは向日くんって名字なのにジローのこと名前で呼んでるし、手も普通に繋いでたし、これじゃどっちと付き合ってんのかわかんねぇよ」

そう言って、向日くんは苦しそうな顔した。
ああ、私、向日くんを傷つけちゃったんだ。
涙がぽろり、零れてしまった。
向日くんが目を丸くする。

「わり「ごめんなさい!」

私は走ってその場から逃げた、向日くんとジローをおいて、泣いてるところなんか見られたくなかった。
弱虫だけど、弱虫なりにプライドがある。
私は今までみんなの前でなるべく泣かないようにしてきた、強いと思ってもらいたくて。
でも、だめだ。
私なんか本当に弱虫だ。
走って走って、教室に駆け込んだ。
幸いはじめの授業が移動教室だったので誰もいなかった。
私は自分の席まで歩いていって涙をふいた。
向日くんの言葉、遮ってしまった、謝らなくちゃ、私は溜息をついた。
向日くんはこんな私のどこが好き、なんだろう。
いいとこなんてひとつもないのに。逃げて逃げて、ずっと逃げてきた私なんかのこと、好きだなんて変だ。
優柔不断でネガティブ、明るいか暗いかで言われれば確実に暗い方の私なんかを向日くんは何故好きになったんだろう。
正反対の性格に惹かれたのだろうか、いやないな。
なんでなんだろう、今度向日くんに聞こうかな、でも私逃げてきたんだ、もう、喋ってくれないかもしれない。
このまま、私達別れることになるのだろうか、うん、それでいいんだ。
私達が付き合うなんて間違ってたんだ。
別れたら、元通りだ、ジローも安心するだろう。
これで終わりだ、溜息をついて机に突っ伏すとどたどたと走る音が聞こえてきた、誰だろう。

「  」

びくり、名前を呼ばれて飛び跳ねた。
がたん、机と椅子が音をたてる。ドアを見れば向日くんが立っていて、息をきらしていた。
向日くん、私の名前、知ってたんだ。
それより謝らなくちゃ、どきどき、心臓がいつもより早く脈打つ、声がでない。

「ごめん」