嗚呼、嗚呼何故、彼は小春ちゃんを好いている、そんなこと付き合う前から知っていたことなのに、何故?苦しくて悲しくてたまらない。
溢れ出そうな涙をぐっと飲み込んだ。
嗚呼、嗚呼、今目の前ですやすやすやりと寝ている彼の首に手をかける。
ぴく、ユウジが揺れる、びくりぎくり、私も揺れる、そして手をゆっくり戻す。
戻した手で、指で、彼の髪を撫でる。

「ごめんなさいね」

呟いて、飲み込んだはずの涙を流す。
す、彼の手が伸びてきて私の頬から涙を掬い上げた。
私はびっくりして立ち上がる、ユウジはどないしたん、そう言って伸びをした。

「なんでもない、いつから起きてた」
「今起きたら泣いてた」

心臓がばくばくいう、今、今ね、繰り越し言う、ユウジは不思議そうに私を見ていた。
私は椅子に座り直す、そしてユウジを見るとユウジはまた机に突っ伏して寝る気のようだった。

「もう帰ろう」

時計を見てそう言えばユウジは突っ伏したまま目をぱちりと開いた、びくり、私は揺れる。
ユウジの真直ぐな視線を感じる、私はゆらゆらと視線を泳がす。

「そうやな」

ユウジはそう言ってまた伸びをした、そして鞄を持って立ち上がる、私も慌てて立ち上がる、彼はそんな私の姿を見てくすくす笑った。
少しムッとした表情をすれば堪忍な、と彼は笑った。
この笑顔、独り占めにしたいと何度思ったことか、私はふ、と笑う、ユウジは安心したようにまた笑った。
生徒玄関まで行って、靴を取って履く、そんな単純作業をしてる時、ふと思う。
小春ちゃんと私、どっちが大事か、なんて。
またじんわり涙が浮かんでくる、私はす、と上を向いて涙をまた飲み込んだ。
そんなこと聞いても、ユウジが困るだけで、私も、誰も何ともならないのに。
くだらない考えをしているとユウジがまだかー?なんて聞いてきた。
ごめん、そう言って駆ける。
ユウジはニッコリ笑っていた、そんな顔を見ると苦しくて悲しくてどうしようもなくなる。
ねぇ、ユウジ、小春ちゃんと私どっちが大事なの、なんて口に出しそうになる。
そんな自分が怖い。
私は笑う、すべてを隠すように、醜い私を隠すように。
ユウジはそんな私を見て、真剣な顔で言った。

「お前が大事や」

涙が、零れてきた。

「くだらんこと考えてんやろ?俺はお前が大事や」

だから付き合うてるんや、そう言って私の頭をぐしゃりと撫でた、ぽろぽろ涙は止まらない、私はユ、ウジ、と泣きながら彼の名前を呼ぶ、彼は笑っていた。

―――――
ユウジってどんなんですか?
もうわからへーん←