朝、学校へ向かう途中に幼馴染みのジローに会った、軽く挨拶を交わして、さっさと行こうと思ったらジローはおめでとうと私に言った。
なんのこと?聞くとジローはがっくんと付き合うんじゃないの?がっくんからメールが来たけど?と言った。
がっくん…ああ、向日くんのことか、思い出してしまった、はあ溜息をついてまあ、と答える。
ジローはおめでたいけどおめぇらしくねぇな、と歩きながら言った。
私も歩き出す、私らしくない?聞くとジローは絶対おめぇ告白されてもうまく返事できないと思うCと笑った。
ああ、わりとあってる、私は苦笑いする。
ジローは続けて、どうせがっくんの勢いに負けて断れなくて付き合うはめになったんでしょ?と言った。
ああ、もうジローには隠し事なんてできないな、私はまあ、と答える。
ジローは複雑そうな、なら、別れろよ、と言いたげな顔をした。
きっと私も向日くんも傷つくってわかってるからだ。
ジローは友達想いのいい人だなあ、私なんかと全然違う。
ぎゅう、胸が締めつけられる。
ごめんなさい、謝るとジローはそれは俺に言う言葉じゃないと言った。
そうだよね、私はまたジローに謝る、ジローは謝りすぎだと私の額を小突いた。

「いたっ」

私が額を押さえるとジローはニッ笑ってピースした。
向日くんの笑顔と重なる、私何考えてるんだろ、顔をぶんぶん横に振る、ジローは不思議そうに眺めていた。
私はふと時計を見る。

「!ジロー遅刻しちゃう」

そう言って走るように促すとジローはえーと言って欠伸をひとつして、俺眠いCと言った。

「おーい何やってんだ?」

後ろから声がしてびくりと肩が跳ねた。
ゆっくりと振り向くと向日くんがおはようと言ってきた。
あ、挨拶返さなくちゃ。

「お、はよ」

そう言って向日くんをちらりと見ればニッと笑っていて、なんだか胸が締め付けられた。

「早く行こうぜ遅刻だ遅刻」
「そうだジロー行こう」

そう言ってジローの手をいつものようにとって、走り出す、この時いつもニコニコしてる向日くんがしかめっ面だったことを私は知らなかった。