「嫌だ」
「は?」
「他の男の人と話さないで」
「えっと」

どうしたの精市くん、笑ってみるけど多分笑えてなくてすっごく苦笑いだと思う。
でも本当に意味がわからないというか脈絡がなくて突然のことだったから混乱してる。

「…俺、嫉妬でおかしくなりそう」
「え、え?」
「好きだから」
「ああ、え?ん?」
「好き」

いろいろ順番が違うような気がするけど取り敢えず今なんだか告白のような言葉が聞こえてきて頭が爆発してしまいそうだ、カァッと体が熱くなる、駄目だ倒れてしまいそうだよ、精市くんが私の肩に手をおいてもう一度ゆっくり私が好きだと言った。
綺麗に整ったお人形さんのような顔が目の前にあって、女の人のようなつくりの顔なのに、真剣な視線の精市くんはすごく男の人だった。

「俺はだめ?」

刹那、くしゃりと眉をひそめて泣きそうな、不安そうな顔をした。

「私、は」

嫌いではない、精市くんのことは好きだ。
でも、少しだけ精市くんに私は釣り合わないとか、いろいろと劣等感を感じてしまったり、精市くんの努力を一番近くで知っているはずなのにそれを才能の一言で否定しそうになる自分が嫌で、だから、それだから。

「…っ」
「!な、泣かないで、ごめん」
「ちが、くて、」
「俺、俺…ごめん、自分のことばっかりで、一方的に」

本当に違うのだ、精市くんのせいじゃない。
私がちょっと卑屈というか酷いことを一方的に考えて涙が出ただけなのに、今にも泣きそうな顔で謝る精市くんは多分自分のせいで私が泣いているんだと思っている。
この涙に、精市くんが関係してることは否定しないけど。

「迷惑だろうけど、本当に、好き」
「、せ、いちく」
「だから泣かないで」

ぎゅっ、と優しく抱きしめられて、精市くんの服に涙がとか精市くんの香りがするとか変態みたいなことが頭を駆け巡った。

「嫌いだったら、突き放して、俺ちゃんと諦めるから」

ずるいと思う。
嫌いなら突き放せというのに腕の力はキツくないが強くなるし、そんな泣きそうな顔で諦めるなんて言われたら何もできないと思う。
私だって精市くんが大好きなのだ。
劣等感とか、いろいろマイナスな感情を含めても大好きで大好きでたまらないのだから。

「…期待して、いい?」
「うん」
「本当に?」
「好きだよ、私も。きっと精市くんに酷いこと言うし、酷いことするかもしれないけど私でよければ」
「よかっ…た」
「な、泣かないでよ!」
「だって」

怖かった、そう言ったあと精市くんは私の肩に顔を埋めてしばらく私をぎゅうぎゅうと抱き締めてた。
ポケ●ンのまきつくだ。などくだらないことを考えてしまった。
精市くんが顔をあげて、また私を見つける。
一度ゆっくりまばたきした精市くんはさっきと同じ真剣な顔をしていた。

「きっと、情けなくて、弱くて、傷付けるようなこと言ったりしちゃうかもしれないけど、それでも大好きだから、俺の彼女になって下さい」
「はい、精市くんの彼女にして下さい」

二人で同時ににっこり笑った。

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いつも幸村を腹黒魔王様で書くのでたまには真白天使にしてみた、天然な幸村も好きです。

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