「ぶっさいくな顔」
「っるさい」

ぐじゅぐじゅ、涙とか鼻水とかなんだかいろんなものが出ている不細工な女、こんなに近くに私のような完璧で素晴らしい男がいるのに他のぽっと出の男に想いを寄せて泣く女。
私の、愛しいひと。
幼い頃から近くにいたのに、私に気付かない、否、近くにいすぎたのかもしれない。
こんなに私は好きなのに、酷いよ、酷い。

「がさつだからな、お前は」
「っさい」
「なんて言われた?好みではないとはっきり言われたか?」
「うるさい!」

雷蔵に言われた、もう少し優しくしてやれと、八にも、嫌われてしまうぞ、と。
そんなことは知っている。
それでも私は天の邪鬼だから、酷い言葉を投げかける。

「三郎にはわからないのよ、恋する乙女の気持ちなんて」
「まあ私は乙女じゃないからな」
「いつか三郎がフラれて泣いてたら同じこと言うから」
「楽しみにしているよ」

ぐじゅぐじゅ、涙とか鼻水とかなんだかいろんなものが出ていた不細工な女、私がどんなに酷い言葉を投げかけても決して私を嫌いだと言わずまた隣りで笑ってくれる愛しいひと。
それが私を愛しているからではなく、幼い頃からの大切な友人だからだということは知っている。
でも、もう少し私はこのぬるま湯に浸かっていたい。

「不細工」
「変装名人!」
「…っ」
「照れたな!」

照れるに決まっているだろう。

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