あ、小橋さんだ、聞き慣れた声がして振り返ればロードの時によく会う学生だった。

「やあ」
「クリンチ!」
「ぐっ…もはやタックルだよ」

思い切り体当たりされる、この子はたまにこうやってクリンチという名のタックルをしてくる、その度にボクはどくどくと早まる鼓動を悟られないように必死に笑う。

「小橋さんこんにちは、私服は初めて見ました!可愛いですね!」
「あ、はは…ありがとう」

可愛い、か。
複雑すぎる、にこにこと笑ってくれるのは嬉しいけど可愛いって、一応ボクも男なんだけど、もしかして女の子に見えてる?なんて有り得ないし笑えない自虐的な言葉を飲み込む。

「小橋さん今日はどうしたんですか?」
「今日はただ散歩、というか気分転換かな」

ただふらふらと歩いていただけ。
それなのにこの子に会えたのはラッキーだったな、なんだか今幸せだ。

「じゃあこのまま私とランデブーしましょうよ!」
「ぶっ」

ランデブーって、え、ランデブーってあれだよねあのあれ、宇宙船どうしがドッキングのため宇宙空間で出会うことのランデブー?いや、いや、有り得ないけどデートの方のランデブー?
いろんなことがぐるぐる頭の中でまわって爆発した。
もちろん比喩表現で、だけど。

「小橋さん?」
「あっ、えっと、なんだっけ」
「ランデブー」
「うん、ランデブー?そ、その、ボクと?」

そう言えば他に誰がいるんですかと呆れられた。
いや、ボク以外居ないからこそ聞き返しているのであって、いやほんと、駄目だボクの脳内は試合よりも何よりもパニック状態になっている。
むしろ脳内以外もパニック状態だ。
脳内以外にパニックになる場所があるのかは不明だが。

「あ、ああ」

そっか、ランデブーという言葉に深い意味などないんだ、きっと。

「そうだね、どこかふらふらする?」

にこりと笑えば彼女は途端に難しい顔をした。
そして少し何か考え込むと口を開いた。

「デートの方がわかりやすかったですか?」
「っ、!?」

ボクは自分でもびっくりするほど思い切り転んだ。

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