放課後、征矢が買い物付き合えよ、と言ってきたので久しぶりに一緒に出かけることになった。
嬉しくて嬉しくて、この間の休みに買った新しい可愛いスカートで待ち合わせの場所で待つ。
大きなデパートのおもちゃ売り場、わくわくしていると声をかけられた。

「ねぇキミ」
「はい…!?」
「ここのデパートってCDショップはいってたよね?どこか知らない?」
「村井くん!?」

振り向いてみるとそこにはさっきまで学校でも会っていた村井くんだった。

「なんで俺の名前知ってるの?」

村井くんは首を傾げた、まるで私を知らないみたいに。
私はびっくりして人違いかと焦るが村井って名字はあってるみたいだし。

「え?私だよほら、うららん!うららんっていつも呼んでるじゃん!今日学校で会ってたしさ!」

つい声が大きくなってしまう、周りの人たちの視線に気付いて口を両手で押さえる。

「あ、ああ、キミ兄貴の知り合い?」
「兄貴?」
「俺は、村井昭吉、村井忠吉の双子の弟」
「え?双子?弟?」

私の小さな脳みそでは理解しきれない沢山のことが起きすぎて目が回りそうになる。

「言ってなかった?まあ学校も違うし、別に言わないか」

昭吉くんはふわりと笑った、同じ顔だけど中身が違うと違うもんだな、と失礼ながら思った。

「でもそっくりだね!」
「まあね」

それからいろいろ話しているとなんだかすごく不機嫌そうなオーラを後ろから感じた。
くるりと振り返ると征矢が睨みながらこっちにくる。

「征矢!」
「村井ぃいいいい!」

征矢が走り出した、このままじゃきっと昭吉くんがぼっこぼこのぎったんぎったんのペシャンコになっちゃう。

「わあああ征矢!違うよ!誘拐犯の方じゃないよ!」
「誘拐犯?兄貴誰か誘拐したの?」
「兄貴…?」

征矢が目の前でぴたりと止まる、よかった。

「村井くんの双子の弟くんだって」
「昭吉です」
「飛鷹だ」

ぺこり、お互いに頭を下げた。
少し話すと昭吉くんはすぐ征矢と仲良くなった。

「しかし見た目同じでも中身が違うとだいぶ違うな」
「そうか?まあ兄貴と一緒も嫌だけど」

ははは、と笑ってふと思い出す、昭吉くんなんで私に話しかけたんだっけ。
うーんと頭を捻る。

「あ、そうだ、昭吉くんなにか言ってなかった?CDショップ…だっけ?」
「ああ、そうそう、迷っちゃってさ、CDショップどこ?」
「そこ真っ直ぐいって右だ」
「ありがとう」

昭吉くんはまたもふわりと笑って早足で示した方向へと行った。
征矢と二人で双子なんてびっくりだねと話しながら昭吉くんの後ろ姿を見守る。

「あいつ左に曲がったぞ!」
「え?」

駆け足で追いかけて捕まえる。

「右って言っただろ!」
「え?右に行かなかった?」
「左だ!」
「あれ?おかしいな」

うーんと昭吉くんは考えこんだ。

「もしかして方向音痴?」
「…兄貴もそう言う」
「連れてってあげるよ」
「ありがとう」

連れてってあげると言って歩き出した直後昭吉くんは迷子になった。
二人で数十分かかって探し出した、昭吉くんはごめんごめんと謝るが本当に疲れた。

「じゃあ手繋ごう」

手を出すと昭吉くんはびっくりしながら首を傾げる。

「いいのか飛鷹?」
「何故俺に聞くんだよ」
「お前の彼女」
「なっ」
「そ、そう見える?」
「え?違うのか」

昭吉くんがまじか、と驚いていた、私は嬉しくて嬉しくて、征矢のその、か、彼女に見えるなんて言われたのは初めてだから舞い上がってしまった。
今なら全財産(3909円)誰かに貢いでしまいそうだ。
征矢はどんな顔してるのかな、と見てみるとかたまっていた。
昭吉くんはなら手繋ごうと私の右手を掴んだ。

「じゃあ行こう」
「お、おう」

手を繋いでいるから迷子にはならなかったが引っ張られて迷子にはなりかけた。