「うららん!?」

突然肩をがしりと掴まれて、うららんと叫ばれて、私はびっくりして何も言えないままその人に引きずられていた。
あれ誘拐って、こういうことをいうんだよね。

「あれ?」
「た、田中!助けて!」

田中がたまたま通り掛かって私に気付いてくれた、たたたと駆け寄ってきて私を引きずっていた人に声をかける。

「あの…」
「なんだいキミ!」
「こいつの知り合いですけど、あの、手離してもらっていいですか」
「いやだ!せっかく見つけたんだ!」

なんだかぎゃあぎゃあ騒ぐ私を誘拐しようとする人に田中ははあ、とかええ、とか適当に返事をしていた、困っているようだ。
大変だ、このままだったら田中が流されて私が誘拐されるんじゃないか。

「やあみんなおはよう」
「鈴木くん!」
「鈴木!」

本日二人目のたまたま通り掛かった友人、鈴木くんに助けを求める。

「こいつがなんか、離さなくて」
「絶対離すか!」
「助けて鈴木くん」
「ちょっとキミ、天使が嫌がってるじゃないか、離しなさい」
「天使!?キミは天使派か…キミとは意見があわないなぁ………僕は小悪魔派だ!!」

どーん、という効果音がつきそうな感じで誘拐犯は叫んだ。

「いや、別に小悪魔とかどうでもいいから手離しなさい」
「全く僕の天使が小悪魔って…………いい!」
「鈴木しっかり!」

なんだか鈴木くんが洗脳されかけている、大変だ本当に誘拐される。
私が泣きそうになると田中が離せよと少し怒ってくれた、いいぞもっとキレろ田中!

「いやだ!うららんは僕が見つけたんだ!」
「だからそのうららんってなんだよ…」
「もしかしてそれって魔法少女はるうららんのことかな?」
「それ以外になにがある!」

誘拐犯は叫んだ、よく叫ぶなこの人。
鈴木くんが田中とコソコソ話しはじめた。

「……田中くん」
「ん」
「この人に関わらない方がいいかも…」
「まあ…誘拐犯だしな」
「いや、きっとオタク…っていうか天使を魔法少女はるうららんっていうアニメのヒロインと勘違いしてるよ」

鈴木くんと田中のコソコソ話が終わって、田中が大きな溜息をついた。
早く助けてと言えば田中が今助けるよ、と言って誘拐犯の頭をバッシーンと叩いて目を覚ませ!と叫んだ。
いや目は覚めてるだろ、と私が言えば鈴木くんがいや、覚めてないよ、と溜息をついた。

「なんだよ!痛いじゃないか!」
「いたいのはお前だよ!」
「うるさい!」
「てかほんともっと痛い目みるよ…キミ」
「あ……ほんとだ……お気の毒に」
「え?なんだよ突然」

二人が誘拐犯から少し離れる、私がどうしたのか聞いてみると田中が指差す方向を見て安心した。

「征矢!」

その後誘拐犯はぼこぼこにされました。