「不動って下手だよね」
「あ?何がだよ」

隣りで顔を腫らしながらも平然と座っている不動に声をかければ明らかに不機嫌な声が聞こえた。

「生きるの」
「はあ?」

なんだってんだよ、と不動は呟いてごろんと寝転がる、だって、だって不動は何も悪くないのに、いつだって他の人のこと考えて、自分が悪者になって、優しいのに、優しいのに、私は泣いてた。
不動は舌打ちをして私の頬をぎゅむぎゅむと伸ばす、しばらくして離してまだ泣き止まない私にデコピンする。
不動が私を泣き止まそうとするたび私は泣いてしまう、それは痛いからとかじゃなくて、こんなに優しい不動がみんなに理解してもらえなくて悲しくて寂しくて涙が零れるのだ。
今日だって喧嘩をしたのは相手が一方的に悪くて、不動はずっと手を出さずに我慢したのにちょっともみ合って手が当たったのを大袈裟に騒がれて先生に怒られた。
手が当たったのだって私がさっきうけたデコピンくらいのものなのに相手が包帯なんて大袈裟なものを巻いて嘘泣きするし、普段先生の前では大人しくしてるからって先生もそっちを信じて一緒に不動を責めるから不動は馬鹿で短気だから暴言を吐いたのだ、何も悪くないよ、暴言はちょっとだめだけどあれくらいなら私だって言う。
ひどいよひどいよ、でも私もひどい、先生たちに責められる不動を見ていただけなのだから。
鼻を啜って不動にごめんって言ったら不動は気にしてないって言った。
不動は優しい、優しいよね。

「私、先生に今から言いに行く」
「いい」
「でも、でも、不動は悪くない」
「言っても意味ねぇし、それに何かしてもらいたいわけでもねぇ」
「ごめんなさい」

不動の目は丸い。

「ごめっ…な、さ…」
「ばーか」

不動が笑う、私の頭をがしがしと撫でて、私は袖で涙を拭って不動を見る。

「お前がわかってればいい」
「ふ、どう」
「お前だけが、わかってくれてりゃいいんだよ、ばーか」

いつも意地悪く笑う不動が、にかっと爽やかに笑うから不動は爽やかに笑うこともできたんだねと言えばめちゃくちゃ怒られた。
でもなんだかすごく楽しくて私も笑う、不動がさっきの仕返しみたいにお前も可愛く笑えるんだな、と言ってきたので思い切り殴っておいた。

「おまっ…痛ぇ」
「ごめんねー」
「気持ちがこもってねぇ!」
「しゅみまちぇーん」
「うぜー」
「不動」
「あ?」
「だいすきだよ」
「……っざけんな」
「え?」
「反則!反則だ!」
「なにが?」
「退場!」
「えー」


――――――
アンケートで不動と言ってくれた人がいたので
不動、こんなキャラだったかなあ…とぼんやり思いつつ書き上げました
でも不動はまた書いてみたい