「にじろうさん」

小さな小さな私の声、震えていた。
にっこり笑ってにじろうさんは振り返る、なんですか、そう言って私を見る。
にじろうさんが私を見てる、心臓がそれだけでばくばく、ばくばくと破裂しそうだ、私は相当にじろうさんが好きなんだな、知ってるけど。

「あの、」
「また悪夢ですか?この間と同じタイプのものはちょうどきらしてて」
「違います、」
「悪夢じゃない?」
「はい」
「そうですか、それはよかった」

にじろうさんはまた笑った、整った綺麗な顔をくしゃりとした、優しい顔、ばくばく、私の心臓もう少し頑張ってよ。
心臓がばくばくしすぎたせいなのかぎゅううと悲鳴をあげた、痛い、苦しい、私は胸を押さえる。

「どうしました?」

にじろうさんが私の顔を心配そうにのぞく、ぎゅうぎゅう、ぎゅうううう、私の心臓、頑張れ。

「い、たい」

小さな小さな声、絞り出したらにじろうさんは大丈夫ですか、と大きな声をだす。
苦しいよ、いっそ告白したら楽になるのだろうか、それなら言ってしまおう。

「にじろうさん」
「はい」
「好きです」

ぎゅうううう、心臓、もう少し待って、すぐよくなるよ。
一呼吸おいてにじろうさんは笑った。

「僕もですよ」

にじろうさんの笑顔はいつも見ているのに、この笑顔は特別だった。
私だけのにじろうさんの笑顔、初めてみる、いつも見てるのに、初めて。
心臓、これでいいかい。

「……もっと痛くなりました」
「ええ!?」