「隣、いいかい?」
「やだって言っても座るでしょ」

まあね、彼はにこりと微笑んで私の隣りに座った、再び本に視線を落とす、けれど隣りの彼の視線が気になってなかなか進まない、彼の方を向けば彼と目があう、どきりと心臓が跳ねて私は急いで目を逸らす。
くすくすと彼が笑う声が聞こえた。
少し頬を染めて、本で顔を隠す、彼は隠さないで、とその男の人とは思えないほど綺麗な指で私から本を奪う。

「やめてよ」
「せっかく会いに来たんだから話そうよ」
「家隣りじゃない」
「でも学校が違う」

そう言って彼はテーブルの上に置いてあったしおりを本に挟んで本をテーブルにおいた。
私が本に手を伸ばすと彼の手がそっと私の手を握った。
ぎょっとして彼を見ればにこにこといつもと同じ爽やかな笑顔で私を見つめている、私が逃げようとしてもなんで逃げるんだいと逃がしてくれない。

「幸村って性格悪いよね」
「そう?」

すごく悪いよと言って私は空を見上げる、今日はこれから雨が降ると美人なお天気お姉さんが言っていたけど空はそんなこと微塵も感じさせないくらい青い。

「今日は雨だって言ってたね、家の中に入った方がいいよ」
「もう少し、きっと降らないから」
「キミの勘は当たらないよ、ほら、行こう」

彼に手を引かれて家の中に入る、ふと後ろを振り向くと雨がぽつぽつと降っていた、さっきまではあんなに晴れていたのに。

「幸村ってエスパー?魔王?」

私がそう言えば幸村は私が読んでいた本で私の頭をぽんと叩いた。
ごめんごめんと謝って本を奪う、幸村は綺麗に笑った。

「お腹すいた」

やけに子供っぽく幸村が言うものだから私はくすくす笑いながら冷蔵庫へと駆けた。

「オムレツがいいな」
「いいよ、何いれる?」
「チーズだけでいいよ」
「わかった」

私が卵とチーズを出してフライパンを温める、幸村はソファに座ってテレビを見ている。
なんだか結婚したみたい、笑っていたら幸村になに笑ってるの、と聞かれたので内緒と言っておいた。
雨はまだ止まないようだ。

「はい」

しばらくしてオムレツを幸村に渡すと幸村が声をあげて笑った。

「ふふ、面白いでしょ」
「うん」

白い皿に黄色オムレツ、その上の赤いケチャップが愛の言葉を囁いていた。

「俺も好きだよ」


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