俺の彼女は今円堂と楽しそうに話している、それだけならまだいい、だがしかし、今さっき彼女は円堂に抱きついた。
円堂は顔を真っ赤にして彼女から離れたが彼女の方は全く気にしてない様子で笑っていた。
彼女は俺にも抱きついてきたことなどないのに。
俺はショックだった、彼女は俺と付き合っているのに俺には抱き付かないで円堂に抱きつくなんて。
彼女は俺のことをどう思っているのだろう、本当に好きなのだろうか。
思えば彼女から好きと言われたことはない。
告白も俺からで、彼女はいいよ、としか言っていない。
好き、ではないのか。
はあと溜息をついてまた円堂達を見る、また抱きついていた。

「や、やめてくれよ」
「いいじゃん守くん大好きー」
「は、恥ずかしいから」

大好き。その言葉にズキンと胸が痛む。
俺には一度も言ったことがないのに。
守くん、俺のことは鬼道くんと名前も呼んでくれないのに、円堂は名前呼び。
悔しい、悔しくて悲しい。
俺はたまらなくなって彼女のもとへ行き手をひく、彼女はかなり驚いた様子で鬼道くん?と首を傾げていた。
黙って彼女を連れて屋上までくると彼女の手をはなした。

「お前は」
「なに」
「俺の彼女だろう」
「そうだけど」
「なら、」

何故円堂に抱きつくんだ、そう聞くと彼女はへ、と言った。
「だから、何故抱きつくんだ、それと大好き、と言ったし、名前で呼んでいるし」
「抱きつくのは、大好きだからだよ、名前で呼ぶのは幼馴染みだから、だよ?」

大好き、まただ、彼女は円堂のことが好きで、俺は遊びなのかもしれない、下をむいていると彼女は鬼道くん?と顔を覗き込んできた。

「でもね、鬼道くんの方がもっと大好きだし、名前…呼びたいな、なんて」
「え」
「ご、ごめんなさい」

彼女はそう言って走り去ろうとした、俺は彼女の腕をつかむ、待ってくれ、声をかけるとまたごめんなさいと謝った。俺は謝らなくていい、と言ってぐいと引っ張り抱き寄せる。

「好きだ」
「鬼道、くん」
「名前でいい」
「有人」

ちゅ、キスすると彼女は顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせた。

「でもこれからは円堂に抱きつくのはやめてくれ」
「わかっ、た」

彼女はそう言って俺の胸に顔を埋めた。