征矢の部屋に雑誌があった、表紙の女の人は、胸が大きかった。
私は自分の胸を見て、取りあえず泣いた。

「なんでお前俺の部屋に…って泣いてんのか?」
「征矢も所詮男なんだあああああっ」
「え?いや俺男だけど!?」

征矢の部屋を勢いよく飛び出す、どうせ私は貧乳ですよ、その夜私は涙が止まらなかった。
次の日の学校、憂鬱な気持ちで登校する、おはよう、後ろから声をかけられて振り返るとのんちゃんがニッコリ笑って立っていた。

「おは…」

ふとのんちゃんの胸を見る、昨日の雑誌の女の人がよみがえる。
じわり、涙がにじんできた。

「のんちゃんなんか…」
「?」
「のんちゃんなんか(胸が)ぺったんこになっちゃえー!」
「え(ぺったんこって…車にひかれろ…的な…?)」

私は泣きながら走った、みんなが私の胸を見てくすくすくすくす笑ってる気がした。
教室に入ると私は自分の席に乱暴に座る。

「(なんか荒れてんなー)おはよう」
「男も巨乳も死ねばいいのに…」
「(えー)ど、どうした?」
「……ふ…ふえええっ」
「えええ泣くか普通?」

涙が止まらなくて、私は声をあげてないた、田中はティッシュを私に箱ごと渡してくれた、私はティッシュで涙をふく。
ふいてもふいても涙は止まらなくて、私はさっきよりも大きな声で泣いた。

「やあ田中くんに僕のてん…し…な、泣いてる!?田中くんキミって人はばかやろう!」
「俺じゃねえよ」

鈴木くんが田中に殴りかかる、田中はするりと避けて逆に鈴木くんを殴った。

「ふえええっ」
「何があったんだよ、言ってみろ」
「征矢が巨乳……で、私は貧乳…で、」
「飛鷹は別に巨乳じゃないぞ!?」
「ふえええっ」

泣いてるせいでうまく伝えることができない、もどかしくて、涙が止まらなかった。
するとずっと考えてた鈴木くんが口をひらいた。

「もしかして飛鷹くんは巨乳が好きで、でも私は貧乳だって言いたいのかい?」

私はこくこく頷いた、鈴木くんがわかってくれた、嬉しくて、私は泣きながらも頷いた。
田中は、鈴木お前すげえなと笑っている。

「よく聞いてね、胸はただの飾りさ、僕は、胸とかじゃなく、貴女が好きなんだ」
「あり、がとす、ずき、く…」

そう言って鈴木くんと一緒に田中を見た、田中は私達の視線に気付くと首を傾げた。

「俺?俺は…」

田中が答えようとした瞬間鈴木くんが叫んだ。

「大丈夫!田中くんはロリコンだからぺったんこがタイプだよ!」

鈴木くんがにかっと笑う、田中ははあと溜息をついて鈴木くんを見た。

「鈴木…お前さ、この間のホモ疑惑といい俺のこと大嫌いだろ?」
「ああ、僕の天使のまわりをうろつく男はみんな大嫌いだね!」

鈴木くんが手を腰にあてて胸をはった。
田中はまた溜息をついて鈴木くんを冷たい目で見た。

「なんかお前…暑苦しい」
「ええ!?爽やか男子代表の僕が!?」
「鈴木お前、最近頭のネジなくしただろ、結構大切なとこの」
「失礼だぞ田中くん」
「ふえええっ」
「あっ忘れてた」
「ひどいよおっ」

私がそう言えば二人はごめんと謝って私の頭を撫でた。

「大丈夫だよ、胸があるとか、胸がないとか、好きになったら関係ないよ…ね、田中くん」
「ん?あ、ああ…」
「でも私…ほんとにぺったんこで…」

そう言って自分の胸を見る、ない、女の子にあるべき膨らみがないよ。
私はまた声をあげて泣いた。

「(ああ、僕の天使…より一層可愛いなあ)」
「(今日の夕飯何にしようかなあ)」

なんでこんなにぺったんこなんだろう、なんで。
毎日牛乳とか飲んでるのに。

「うーん、じゃあいっそ飛鷹くんに聞いてみたら?」
「え」
「それがいい!俺呼んでくる」

田中が走って征矢を呼んできた。

「征矢…」
「なんだよ」

征矢は昼寝をしていたみたいで欠伸をひとつして私を睨むみたいに見た。

「ぺったんこでもいい?」
「は?」
「胸小さくてもいい?」
「なっ、胸!?」
「やっぱり胸はあった方がいいよね…」
「べべべ、別に!胸、なんか!てかお前結構あるだろ!」
「(え?)」
「(え?)」
「ほんと!?」

私、胸、あるの?

「あ、ああ」
「よかった征矢大好き!」
「だっ抱き付くんじゃねえ!」
「はあい」
「(うわ…うざ…)」
「(バカップルってこれか)」