部活が早く終わって家に帰って自室に戻ると見知らぬ女が俺のベッドに腰かけていた。
お前誰?今日俺以外家族みんな出かけていないはずだけどどうして俺の部屋入ってるわけ?と声をかけると彼女は俺の方を見てすごく嬉しそうな顔して、でもすぐに困った顔して何も言わずに俯いた。
しかし、綺麗な女だ、赤のワンピースがよく似合っている。
彼女の白い肌に赤がよく映える。
俯いたままの彼女に質問変えるわと言って俺のこと知ってるか?と聞いた。
彼女はぱあと顔が明るくなった、そしてこくこくと頷いた。
知ってる、か。
次に俺もお前のこと知ってるか?と聞いた。
彼女はニッコリ笑って頷いた。
知ってる、知り合いなわけだ。
だめだ全然思い浮かばねぇ。
ふと視線を彼女から逸して水槽にやると俺の可愛い可愛い真っ赤な金魚ちゃん(名前はきんこ)がいなかった。
俺に雷が落ちた、気がした。

「お前俺のきんこを喰っただろぃ!」

自分でもありえねーこと言ってるって思うけど犯人はこいつしかありえねー。喰ったかどうかは知らねーけど。
すると彼女は首をぶんぶん横に振った。
俺はじゃあきんこはどこ行ったんだよ、と叫ぶ。
彼女は非常に困った顔した、やっぱりお前が喰ったんだろぃ!涙がぽろぽろ零れてきた。
大好きだったのに、いつも俺のこと慰めてくれたきんこ、そのきんこがいないなんて。
その場に泣き崩れる、人の前で、しかも女の前で泣くなんて滅多にない俺だけど状況が状況だ。悲しすぎる。
きんこ、きんこと名前を呼ぶ、彼女をちらりと見るとニッコリ笑った。
なに笑ってんだよぃ、くそ。
俯くと同時にぴちゃ、水に何かが入るような音がした。
ふ、と頭をあげると女はいなくなっていた。

「きんこ…!」

水槽にはまるで何もなかったかのようにきんこが泳いでいた。