「のんちゃん!」

違うクラスには入ってはいけないという学校の面倒くさいルールがあるのでのんちゃんのクラスのドアのところで叫ぶ、のんちゃんはニコニコ笑いながら私のもとへ駆けてきた。

「なに?」
「昨日のことなんだけど」
「昨日?」

のんちゃんは不思議そうに首を傾げた、こういう行動ひとつひとつがのんちゃんの場合女の子っぽくて、可愛い。
一応女の子の私からしてものんちゃんは相当可愛い。
きっと大半の男の子はこういう子が好きだと思う。
というかのんちゃんのこと好きだと思う。
幸一先輩がシスコンなのもわかる気がする、私の妹がのんちゃんだったらストーカーするもん、妹でもストーカーするもん。

「アデューって言ったの忘れてくれ…」
「ふふっ、ああ、あれね、面白かったよね」
「うそー!のんちゃんてっきり気持ち悪いと思ってたと思ったよ!」
「気持ち悪くなんかないよ、面白かったよ。」

ニッコリ笑うのんちゃんに私は抱き付く、そして静かに、のんちゃん嫁に来ないか、そう言えばのんちゃんは困ったように微笑んで、ありがとうと言った。

「困らせてごめん」
「大丈夫だよ」

のんちゃんはいつもニコニコしてて優しい。
私ものんちゃんみたいになりたいな、って何回も思ったことがある。
でも、無理だよね、私みたいなのがのんちゃんみたいに可愛くて女の子みたいになるの。

「でもほんとのんちゃん嫁にほしいわ」
「でもわたし…料理壊滅的に苦手だし」
「………ごめん私否定できない」

のんちゃんの料理を一度食べたことがある、見た目は100点むしろ5000点くらいあげたいのだが味が壊滅的にだめだった。
簡単に言えばのんちゃんの手にかかればすべて無味か味濃すぎになるのだ(幸一先輩談)
無味の甘い卵焼き、くらいなら許せる、砂糖たりなかったんだなあってなるから、でも私のその時の料理は違った、チャーハンだった。
てっきり味の濃すぎるチャーハンかと思って食べたらなんと、無味のチャーハンだった。
無味のチャーハンとかできる方がすごい。
醤油とか塩胡椒とかいれても、無味になるのだ。
私はそれをのんちゃんのみができる超次元料理と呼んでいる。
幸一先輩もそう呼んでいる。
素材の味すら感じないのだ、神の領域だと私は勝手に思っている。

「と、取りあえず私教室戻るね、チャイムなっちゃう」
「あ、うん、またね」

のんちゃんはニコ、と笑って私に手を振った、私も手を振る。
教室に戻ると不機嫌そうな顔をした征矢が私をじいと見ていた。

「なに?」
「お前佐々木のとこ行っただろ」
「ああ、うんのんちゃんとこ行ってアデューを撤回してきた」

へへへと笑えば征矢は全く笑わず(もともとそんな笑う方じゃないけど)真剣な表情で私に違うと言った。
私は首を傾げた。

「愛乃の方じゃねえよ」
「へ?」
「幸一」
「ああ…昨日、てかなんで知ってるの?」
「幸一からメールが来た」

幸一先輩からメール?まさかまさか私が征矢を好きって言ってないだろうな、私はすぐに征矢に、なんだって?と聞いた、すると征矢は携帯を取り出して私に見せた。

「意味不明だよな」
「征矢…いや…T……君は俺の妹を狙っている奴に好意を抱かれてるみたいだよ……」
「意味不明だろ?幸一の妹は佐々木だから佐々木を狙ってるってもしかして俺男に狙われて…」
「消去!」

光の速さとは言わないがそれくらい速く私はそのメールを消去した。

「何故!?」
「むしろ携帯をへし折りたいわ」
「やめろよ俺のなんだから!」

征矢は私から自分の携帯を守るように奪った、私は溜息をついて、今日幸一先輩の携帯折りに行ってくるわ、と言って携帯を折る真似をしたら征矢は真剣な顔して行くなよ、と言った。

「は?なんで?」

征矢は黙る、私は、私の勝手でしょ?と言えば征矢はなんかもごもごと言った。

「なに?」
「おっ…お前の勝手だけど……俺以外の男の部屋なんて危ねえから…」

危ない?私が首を傾げると征矢はそうだよと言った。
男の部屋が危ないなんて話聞いたことないし、第一なんで危ないの?そう言えば征矢ははあ、と溜息をひとつついて私の肩をつかんだ。

「男は狼だからな」
「狼男!?月見て変身!?」

私がそう叫ぶと征矢はがくりと肩を落とした。
しかし私は興奮して征矢が肩を落としたことに気がつかなかった。

「まじでそういうのいるんだ!幸一先輩実は狼男とかまじでー!?」
「田中!」
「ひっ…(とうとうきた)」
「こいつに説明しろ!」
「俺がかよー…てかこの状態のこいつにかよ……無理だよ」
「田中あああああ!」
「ひぎゃあああごめんなさあああい」