なんだかこの間の一件から征矢の中で何かが吹っ切れたのか前のように普通に話せるようになった。
それが嬉しくて、親友ののんちゃんに言ったら、よかったねって笑ってくれた。
のんちゃんの笑顔はいつも眩しい、のんちゃんは可愛い、いつもそう思う。
女の子って感じで、私はのんちゃんが大好きだ。

「で、幸一先輩」
「わざわざ俺んとこに来てまで妹を褒めたたえたって何もでないぞ」

そう言いながらへらへらと嬉しそうに幸一先輩は笑った。
そして、私の前に高級そうなお菓子を並べていく。

「もう高級そうな菓子が目の前にずらりと並んでるんですけど」

そう言えば幸一先輩はハッと目を見開いて、つい出してしまった、とぶつぶつ呟いていたので私はお菓子をぱくりと食べてから胡座から正座に変えて、幸一先輩に頭を下げた。

「のんちゃんを私にください!」
「却下!」
「ええ」

なんで、と言えば一人しかいない大切な妹だからな、と腕を組んで言った。
私のんちゃんを幸せにしてみせるから、先輩のことお兄ちゃんって呼ぶからと言えばやめてくださいと言われた。
真顔だった。
くそ、私が妹じゃだめなのかよ幸一お兄ちゃんと言ったらだめに決まってるだろと言われた。
また真顔だった、くそ、悔しい。
幸一先輩はそれにお前もう好きな奴いるだろ、と言った。
どきり、心臓と肩が同時に跳ねた。

「へ?」
「征矢のこと好きだろ?」

幸一先輩はいい笑顔だった、私は嫌な汗がだらだらと流れでてきた。

「恥ずかしいからやめてくれ…せめて…T…そう…Tくんと言ってそれなら少し軽減されるから」

幸一先輩をばしばし叩く、痛い痛いと先輩は笑った。

「Tのこと好きだろ?」
「そ、そうだけど…幸一先輩はなんでも知ってるんだなあ…」

すごいなあ、と言えば幸一先輩はへらへら笑って、天才ですから、と言った。

「頭の中は妹のことでいっぱいな残念な脳みそだけどね」
「煩いぞそこ」

ビシッと指でさされた、私ははいはいと適当に受け流してまた菓子を食べた。
幸一先輩はへらへら笑って言ってもいい?と聞いてきた。

「何を?誰に?」
「Tにお前がTが好きってこと」
「のんちゃんにキミの秘密を言ってもいいんだよ」
「すみませんでした」

幸一先輩は頭を下げた、私はお互いに秘密ね、と笑って、幸一先輩の部屋をでた。

「あ、のんちゃん」
「あれ、来てたの?」
「うん、幸一先輩んとこに用事があってさ」
「そうなんだ、帰るの?」
「うん、また来るね」
「うん」
「ありがとう、アデュー!」
「じゃあね」

のんちゃんの家を出て数分後、アデューはさすがに変だったなと私は頭を抱えた。