なんだか最近征矢に元気がなくて、理由を聞いても答えてくれなくて、なかなかおしゃべりもできなくて私は悲しくなった。
だって好きな人とおしゃべりできないのは辛いよ、私だって一応恋する乙女だもん。

「で、田中に鈴木くん、チミ達を呼んだわけだよ」
「ケーキバイキングにか?ふざけろ!俺が甘いもん苦手なの知ってるだろ!」
「僕は好きだから嬉しいな、あー美味しい」

鈴木くんはチョコレートケーキをぱくりと食べてニカッと笑った、よかった、楽しんでるみたいだ、私もモンブランをぱくりと食べる。
田中はブラックコーヒーを飲みながら溜息をついた。

「征矢もしかして好きな人でもできたのかなあ」

その子に勘違いされちゃうのを恐れて私を遠ざけてるのかなあ、そう言ってショートケーキに手をのばす。

「うーん(飛鷹が好きなのはどっからどう見てもこいつなんだけどなあ)」
「今僕、田中くんと同じこと考えてる自信がある」
「俺も」
「え!もしかして二人とももう征矢から恋愛相談されてるとか!?」

そんな、まさかまさかまさか!私がショートケーキを口いっぱいに頬張って目を見開く、二人はお互いに見つめあって、それから溜息をついた。

「お前はばかだ」

田中がそう言って私の皿にのっていたフルーツを奪って食べた。
ひどい、いくら田中が学年5位で私がそれより下だからってばかって言うなんて。
しかもフルーツ食べるなんて、悲しい、私悲しいよ。

「黙れ、お前らに振り回されてる俺と鈴木の悲しさの方が大きいよ」
「え」

確かに振り回してる、かもしれないけどそんなに悲しいのか、私知らなかった。
ごめん、謝れば田中はまた溜息をひとつついて言った。

「鈴木なんか好きな奴に恋愛相談されてんだぞ…悲しすぎるだろ。腹ん中では絶対このままでいいやとか思ってんぞ」
「え…鈴木くん好きとか言ってるの…あれ…あの…冗談なんじゃないの?」
「はは、僕はいつも本気だよ」
「え…っと……」

なんだろう、心臓がばくばくいってる、好き、私のことが、好きだなんて。
好きって言葉が頭の中をぐるぐるぐるぐる、顔がどんどん赤くなるのが自分でもわかった。
そんな私を見て田中は溜息をついて、鈴木くんは苦笑いした。
どうしよう、私は言葉がでてこなくて、俯いた。

「ぼっ、僕は大丈夫だから、俯かないで、ね?」
「でも…」
「本当に大丈夫だから、頼られてるって感じがして嬉しいし」

鈴木くんはニッコリ笑った、でも、辛いよね、私だってもしも征矢に恋愛相談なんてされたら泣きたくなるもん、鈴木くんにごめんねと謝ると鈴木くんは本当に大丈夫だよと紅茶に口をつけた。
鈴木くんは紅茶を飲み干すとこれからも恋愛相談してね、と笑った。
涙が零れてしまいそうだったけどぐっと我慢して、私はチョコレートケーキを口にした、うん、甘い。
でも現実はこのチョコレートケーキみたいに甘くはない。

「鈴木くんの好意に甘えてこれからも二人に相談したいと思います」
「うん、そうして」
「俺はケーキバイキングはもうこりごりだ」

田中がブラックコーヒーを飲み干した、二人が立ち上がる、帰ろうって意味みたいだ、私は急いでチーズケーキを口いっぱいに頬張った。