頭が痛くてくらくらしてしたらとうとう倒れました。

「ちょ!どうしたの!」
「おいばか!」

田中と征矢が駆け寄ってきて私のおでこに手をつけた。

「ひどい熱だ…」
「保健室まで運んでやっから」
「征矢じゃ…無理、だよ、細い、し私自分で歩、く」

そう言って立とうとしたら征矢に思い切り頭を叩かれた。
痛い、呟くと征矢はうっせ、と言って頭を撫でた。
撫でられたところを触る。

「飛鷹運んでやって」
「おう」
「わっ…お、おんぶがいい(お姫様抱っこは恥ずかしい)」

ひょいと征矢にお姫様抱っこされた、女の子みたいに細い征矢のどこにこんな力があるんだろって思うくらい楽々抱えあげられた。

「うっせ」
「じゃあ行こうか(まさか飛鷹がお姫様抱っこするとは…面白いな)」

田中は私の頭をぽんぽんと叩くように撫でた。
征矢が歩き出す。
揺れる、気持ち悪い、死ぬ、征矢の名前を呟くと征矢が私に大丈夫かと聞いた。

「死んじゃう」

そう言えば死ぬなと言われた。
無理です、そう言えば征矢が早足になった。
田中も大丈夫かとちょくちょく声をかけてくれた。
でもだめです、私多分ここで死にます、そう言って目を閉じれば二人して死ぬな死ぬなと走り出した。
尚更揺れて死にそうになるのですが、そんなこと言えるはずもなく、私はただ静かに征矢に抱えられていた。

「ついたぞ」
「先生大変なんです!」

ドアを思い切りあけて、田中が叫ぶと保健の先生がくるりと振り向いた。

「あらーラブラブ」
「そんなこと言ってねーで早くみろ」

征矢が私をベッドにおろして先生の頭をぺちんと叩いた。
先生が痛いよ飛鷹くーんと阿呆みたいな声をだすと征矢は早くみろ、とまた叩いた。

「全く、貴女の彼氏ちょっと短気よ」
「まっまだ彼氏じゃねえ!」
「あらそうなの?まだってことはいつか…ふふふ」
「はっ…(しまった)」
「(先生めっちゃ飛鷹いじって楽しそうだ…先生いきいきしてる)」

そこから私の記憶はありません。
起きたら、田中と征矢が机に突っ伏して寝ていて、先生もいなくなってて、何がおこったんだろうと思っていたら鈴木くんが入ってきた。
おはよう、そう言って鈴木くんは微笑んだ。

「鈴木くん?」
「二人とも心配してあのあと授業ずっとでなかったらしいよ」
「そう…なんだ(二人に迷惑かけちゃったな)」

先生めっちゃ怒ってた、と鈴木くんは笑った。
そうだよね、私も笑った。

「僕はいまさっき田中くんからのメール見て来たんだけどねー」
「ありがとう」

鈴木くんはへらへら笑った、つられて私も笑った。

「全然、もう大丈夫?」
「あー…うん、すっかり」
「でももうちょい寝てなよ、もう放課後だから」

鈴木くんが私に布団をかけてくれた。

「え、でもみんな帰らないと」
「大丈夫だよ、それとも家の方が寝れる?」

鈴木くんが頭を撫でてくれた。
鈴木くんにはあまり撫でられたことないのでなんだか照れる。

「あー…どちらかと言われたら」
「じゃあ起こそう、田中くん飛鷹くん起きて!」
「んー…ああ鈴木、なんだお前授業サボったんか」

田中が目をこすりながら鈴木くんに言った、鈴木くんが授業サボった?

「え…鈴木くんさっき来たんじゃ…」
「鈴木はずっと前からいたぞ」

征矢は欠伸をひとつして、目をこすった。

「鈴木くん…!」
「あはは…バレちゃったな」
「(あの優等生の鈴木くんがサボってくれるなんて)」
「あ、鈴木泣かせた」
「ええ!?僕?」
「おい鈴木覚悟はできてるだろうな」
「飛鷹くん落ち着いて!」

殴る、と言って征矢が鈴木くんに飛びかかった、痛い痛いギブギブと鈴木くんが征矢をぱしぱし叩く。
反撃する余裕があんじゃねえかと征矢は笑った。

「反撃なんかじゃないよいたたたた」
「征矢…メッ」
「(ドツボだ…)」
「(ストライク!)」
「(でたー!)」

三人が頭を抱えた。
私はのびをして、帰ろうか、と言えばそうだね、とみんな帰る準備しはじめた。

「私鞄教室だ」
「大丈夫持ってきたから」

田中が私の鞄をだした、教科書とかも適当にいれたよと言ってたので鞄の中を見たみたいだ。

「もっももももしかしてあれ………見た?」
「ああ、あれね」

田中がニヤリと笑った、見られた、田中に、私の大切な、写真を。

「田中のばかやろー!征矢と鈴木くんは!?見てないよね!」
「なに?なにも見てないよ」

鈴木くんが首を傾げた。
征矢も目を輝かせた。

「なんだよ何か見られちゃまずいもんがあんのか?見せろよ」
「だめ!絶対だめ!」

私の鞄を田中から奪おうとする征矢に飛び掛かる。

「はっはっはっまさか俺の写真があるとは思わなかったよ」
「なっ(こいつ田中が好きなのか!?)」
「えー!(田中くんのことが好きなの!?)」
「言わないでよ!たっ、田中の鬼畜!ばかあ!」
「ははっ、さっ、帰ろ」

田中が私に鞄を渡して保健室を出た。

「うー…泣きたい…恥ずかしい具合悪くなった…征矢おんぶして」
「やだ」
「なんでよ」
「やるならさっきみたいなの」
「なんでお姫様抱っこはよくておんぶはだめなの?」
「うっせ(胸があたるんだよ)」

征矢がそっぽむく、私はふんと言って田中のあとを追いかけた。
鈴木くんもあとを追いかけてきた、征矢も歩いてきた。

「はっはっはっ俺の写真があるなんて予想外だったよ」
「もう言わないでよー!」
「(なんで田中なんだ…)」
「(何故田中くんなんだ…)」
「(年齢ばらばらの飛鷹の写真十数枚だけかと思ったら俺と鈴木の写真まで大事にしてやんの、しばらくこれで楽しめそうだ)」