先輩の告白に俺はびっくりして何も言えなくなった、先輩は続ける。

「日吉、また、ひよちゃんて、呼びたい、私だけ特別になりたいの」

日吉の特別になりたいの、と先輩は言う、俺は、言葉に詰まって、何も言えなくて、でもまだ先輩は続ける。

「ごめんなさいわがまま言って、でも、私の気持ち、伝えたくて、日吉が私のことどんなに嫌っても、嫌味言われても、私は、日吉を、嫌いになれないよ、」
「せんぱ…」
「日吉、日吉ひよし、私、わた、し」

先輩はその場に泣き崩れた。
俺は咄嗟にブランコからおりて先輩のところへと駆けた。
先輩はまた小さくなって泣いていた。
俺はそっと先輩の肩に触れる、びくり、先輩の肩が跳ねる。
俺は黙って先輩を抱き締めた。
先輩は、日吉、と小さく声を漏らした。

「先輩はもう、俺の特別ですよ」
「日吉、」
「俺も好きです、」

ぽつり、呟くと先輩はぽろぽろ涙を零した。
ほんとにほんと?先輩は泣きながら俺に聞く。

「本当です」

それだけ言って笑うと先輩も涙でぐしゃぐしゃな顔で笑った。
嬉しい、そう言って先輩は涙を拭いた。

「俺だって嬉しいですよ」
「日吉が素直だ」

先輩がニコニコ笑う。

「俺がいつもひねくれてるみたいなこと言いますね」
「いっつもひねくれてるよ?」
「そうですか」
「諦めたな」

先輩はその後諦めたらそこで試合終了ですよ、とわけのわからないことを言って、俺の肩を叩いた。
別に試合なんかしてませんよ、と答えて立ち上がる。
すると先輩も立ち上がって砂をはたいて落としていた。

「ねぇ日吉」
「なんですか」

俺も砂をはたいて落としていると先輩は不安そうな顔で俺に声をかけてきた。

「またひよちゃんて呼ばせてくれるの?」
「ひよちゃんじゃなくて、若って呼ばせてあげますよ」

彼女なんですから、と付け加えると先輩の顔がみるみる赤くなっていって可愛らしかった。

「もう帰りましょうか」

辺りは真っ暗で、人もいなかった、先輩に送りますよ、と手を差し出すと先輩は照れくさそうに俺の手をとって、うんと返事した。

「ひよちゃん」
「若って呼んで下さい」
「あ、うん。若」
「なんですか」
「好きだよ」
「知ってますよ」

俺は少し手を握る力を強めた、先輩は一度俺の方を見て、そして笑った。