「なにしてるんだ?」

昼休みに幼馴染みが机で何かを必死になってやっていたので気になって声をかけた。
すると彼女は振り返ることもせず答えた。

「んー分解」
「なにを」
「時計を、僕のあだ名は分解くんさ」

へへっ、と照れた彼女の手元にある分解された時計を見る、見覚えがある。

「あだ名についてはツッコまないからな」
「えー」

思い出した、この時計俺が昨日部屋でなくした時計だ。

「ていうかそれ俺のだろ」
「うん」
「ばかやろう」

思い切り拳骨を頭に落とすと彼女は頭を押さえた。
そして目に涙をためながら俺を見つめる。

「拳骨はひどいよ」
「知らん、時計なおせよ」
「元に戻せなかったら、ご、め、んね」

なんか聞いたことあるリズムで謝る彼女の頭にチョップを落とす。

「ぐっふぇ、日吉若、お前はあのCMを知らないのか」
「は?」

こいつ頭大丈夫か?今までの会話とCMって全く繋がってないだろう。

「僕のあだ名は分解くんっみたいな感じの」
「ああ…あのCMか」

だから分解してたのか、と納得してあのCMを思い出す、結構好きなCMだ。

「ね?」
「なにが、ね?だ!ちゃんと時計なおせよ、それか弁償」

弁償と言った途端彼女がびくりと動いた。
そして恐る恐る俺に値段を聞いてきた。

「いくら?」
「百均」
「ぶふっ」

彼女がふいた。
そして若が百均とか似合わないし、この時計百均かよ!ていうか私ツッコミうま!とツッコんできた。
果たしてこれはツッコミなのだろうか、ただの意見な気がしてならない。

「嘘に決ってるだろ、525円だ」
「百均じゃねぇか!」

彼女が華麗にツッコむ、これはツッコミだと思う。

「ふ」
「なにがふ、だ、ばーかばーか」
「今回のテスト学年最下位のお前に馬鹿とは言われたくないな」

それを言うと彼女の顔色が変わった。

「何故それを…!」
「寝言」
「は?」
「この間寝言で『うーん学年最下位…くっそう』とか言ってたからな」
「私のばかやろう」

自分の頭を一回叩く彼女に自分を責めるな、と囁いてやると耳まで真っ赤になった。

「どうした?」
「ばか若!ばーかばーか」
「だから学年最下位のお前に馬鹿と言われたくない」

そう言うとどうせ私馬鹿だもん、と彼女は俯いた。
いつもと違う反応に少し驚く、いつもならばかじゃないもんとか言いながらむかってくるのに。

「若のばか」

小さく呟いたその言葉の意味がわからなくて俺はただ呆然と立ち尽くした。