同じ学校で同じ学年の鬼道くんは天才ゲームメーカーと呼ばれている、私はてっきり玩具屋さんの子だと思って最近のゲームで面白くておすすめなのはなんですか、できれば簡単なのでお願いします、と初めて会った時聞いてしまった。
その時鬼道くんは、俺はあまり詳しくない、すまないな、力になれなくて、と困ったように微笑んでいた。
よく聞くとサッカーのことだとわかってすごく恥ずかしくなってその場からダッシュですみませんと言って逃げた。
その日から鬼道くんは私を見掛けるたびに声をかけてくれた、普通に挨拶だけだったり、雑談したり、初めはやっぱり勘違いしてたことが恥ずかしくてあまりうまく話せなかったが今はとても仲良くしてもらっている。
仲良くしているといってもずっと一緒にいるわけじゃない、当然鬼道くんはサッカー部の子たちと一緒にいる方が多い。
でもまあ別にそれが嫌だとか嫌じゃないとかは全くなくて、今までと同じようにぼんやり過ごしていたのだ、今までと変わったところは鬼道くんという友達が出来たくらいだ。
だから、今日、突然そんな平凡な日々がグッバイ、ちょっとハワイまで行ってくるわ、みたいなノリでどこかへ行ってしまうなんて思っていなかった。

「あの、鬼道くん」

意味がわかりません、そう言えば鬼道くんはもう一度大きな声で平凡な日々をハワイまで追っ払った台詞を言った。

「結婚してくれ!」
「いやいやいや、あの、え?結婚?は?え?」

本当に理解できない、いや、でも鬼道くんは私なんかよりはるかに頭がいいからもしかしたら頭がいい人の間では流行っているのかもしれない、求婚が。
そうだよ、流行ってるんだよ、私が知らないだけで天才はみんな求婚してるんだ。

「いやいやいや、流行ってないだろ!」
「は?」
「あ、ごめんこっちの話、で、その鬼道くん、本気で言ってる?」
「ああ、もちろん」

鬼道くんはいつもと変わった様子もない、誰かが変装しているという可能性はない、もしかして熱があるとか?
確かに少し顔が赤い、熱だ!熱だよきっと!

「全く、熱があるなら寝てなきゃだめだよ鬼道くん」

そう言って風邪は万病のもとなんだよ?と言えば鬼道くんは俺は本気だ!と言って私の手を握ってきた。

「ほんき?HONKI?」
「真剣なんだ、俺のために味噌汁を作ってくれ!」
「……味噌汁…美味しいよね、すごく好き」
「ああ!俺も好きだ!」

大好きだ!と鬼道くんが叫んだ声が聞こえて、そのあと記憶が全くない。
目が覚めたら目の前には鬼道くんがいて、熱があったのはどっちだ、全く、とか言われて栄養ドリンクを飲まされた。