雲雀さぁん、我ながらなんとも情けない声がでた、でも仕方ないよ、だって本当に本当に私は寂しかったんだから。

「はあ」

全く、君は。と雲雀さんが溜息をついた。
それから涙でぐしゃぐしゃになった私の顔を見てぶさいく、と笑った。
ずみまぜん、一生懸命に目を服の袖で拭く、ぐずぐず、鼻がなる。

「なんで泣いてるの」
「だっ、て、ひ、雲雀さんがっ」

私のこと、最近ずっと無視するから、何度も途中でつっかえたけど雲雀さんは私の隣りに腰を下ろして静かに聞いていてくれた。
嫌われたくないよ、嫌わないで、ずずず、と鼻をすする。
雲雀さんはまた溜息をつく、私の涙は止まらない。

「嫌ってなんかないよ」
「…ほ、んとですか?よかった」

にっこり笑えば雲雀さんはまた溜息をつく、幸せが逃げますよ、ずずず、鼻をすする。

「君はさあ」
「はい」
「僕のこと好きって言ったよね、前」
「はい、大好きです、雲雀さんは私の憧れです」

そう言えばまた雲雀さんは溜息をついた、なぜだろう、何かまずいことでも私は言ってしまっただろうか。
うんうん唸って考える、ハッと思い当たることがひとつ。

「あっ、そ、そうですね…」
「は?」
「す、すみません気がつかなくて、私、」
「なに」

雲雀さんの目はあまり機嫌がよさそうではなかった、私は頭をばっとさげる。
雲雀さんは少しびっくりしたみたいだった。

「その、好きとか憧れですとか、め、迷惑ですよね?いつも付きまとって、私…すみません」
「ねえ」
「はい」
「本気で言ってる?」

雲雀さんが睨んでくる、嫌な汗がでてくる、ちょっとおどおどしながらも本気です、と言うと雲雀さんがふいとそっぽを向いた。

「最悪」
「えっ、ええ?すっ、すみません、私よく顔が真面目じゃないとか言われますけど、へらへらしてますけど、これでもちゃんと真剣で!」
「僕ばっかり、ばかみたい」
「わ、私ばかです、すみません!雲雀さんに勉強教えてもらったのにテストで…間違えて…すみません」

ああ、思い出すと悲しくなってくる、いつも忙しく委員会の仕事などをこなしている雲雀さんに無理言って勉強を教えてもらったのに寝不足でテストの時に簡単な計算を間違えて。
じわじわじわ、思い出すたびに胸の奥から何かが溢れそうになる。

「う、…くっ」

ぼろぼろまた涙が流れてきた、ごめんなさい、ごめんなさい雲雀さん、壊れた機械みたいに繰り返す。
雲雀さんは私を見てぎょっと目を見開いてから溜息をひとつ。

「本当に君ってばか」
「ごめんなさい」
「…好き」
「はい、私は雲雀さんが好きです」
「違う、聞いてるんじゃない、僕は君が好き」
「あっ、ありがとうございます」

にこり、笑うと雲雀さんは本当に本当に心底困ったような顔をしてどうしたらわかるの?と私に言う。
こんなに困った顔を雲雀さんは初めて見たなあ、いつもなんでもできて困りごとなんて無縁の人だから、私は、すごく珍しいものを見た、と呟いた。
すると雲雀さんは顔をしかめた。

「全然会話が噛み合ってない」
「へ?」

すみません、そう言えば雲雀さんはもういい、と立ち上がる。
どこへ行くのか聞けば僕の勝手でしょ、とそっぽを向かれた。
私も立ち上がってのびをする、雲雀さんはそんな私を見てどこに行くのか聞いてきた、私が雲雀さんの行くところ!と元気よく言えば雲雀さんは勝手にすれば、と歩き出す。
雲雀さん、にこにこしながら前を歩く背中に声をかける、なに、ちょっと無愛想な返事が返ってきて私は満足して笑う、雲雀さんは本当に君がわからない、と溜息をついた。