「サボりとはいい御身分だこと」

屋上で空をぼんやり見つめている平介くんに声をかける、私の声が届いたようで平介くんは自分にも当てはまってますよ、先輩と相変わらず空をぼんやり見つめたまま言った。

「私はいい身分だから」
「えー」

平介くんの隣りまで歩いてどさりと座る、平介くんは一度こっちを見てまたすぐに空を見た。

「今日はお菓子ないの?」
「売り切れました」

そっか、残念だ、私が黙り込んでいると平介くんは、あ、と何かを思い出したように呟いた。
小さな声だったけど私は聞き逃さない、クッキーなら、と平介くんは言った。

「ありがとう」
「俺の分だけ」
「ありがとう」
「いやいやいや」
「ありがとう!」
「いやいやいや」
「あ!り!が!と!う!」
「(だめだこの人)」

あきらめたのか平介くんはシンプルな袋にはいったクッキーを私の前に突き出した。
ありがとう、私はクッキーを受け取って食べる。

「んー、美味しい」
「はいはい(俺の分…)」
「はい」

今度は私が平介くんの前にクッキーを突き出す、平介くんのとは違って袋はキャラクターものだ。

「え」
「私が作ったの、あげる」
「作れるんですね(持ってたのに俺の食べたよこの人)」

なんか文句を言いながら平介くんは私からクッキーを受け取った。
平介はいただきますと言って袋をあけてクッキーをもぐもぐ食べる、あ、ハムスターみたい。

「おいしい?美味?どっち?」
「(選択肢一つじゃないか)普通です」
「え?なに?」
「とってもおいしいです」
「よくできました」

ぱちぱちと手を叩く、平介くんは溜息をついていた。

「(なんなんだこの人)」
「てか君ってだれ?」
「えー」
「なんかたまにここで会ったらお菓子くれるけどサンタさん的な人?でもここ学校だから生徒よね?」
「まあ」
「ちなみに私は幽霊なんだけどねー」

憑いちゃうぞ、と去年からこっそり練習していたウインクをしたけど平介くんははあ、そうですか、と呟いた。
リアクションがうすくて私がつまんないと言えば平介くんはすみませんねと謝っているのか謝ってないのかよくわからないことを言っていた、多分謝ってない。

「嘘だけどね、平介くんでしょ?鈴木です」
「すず、き」
「弟がいるよ、お姉ちゃんだよ」
「………」
「ほんとだよ」
「いつもお世話になってます」
「こちらこそ」

平介くんはぺこりと頭を下げた、私もぺこりと頭を下げる。

「確かに似てますね」
「どこが?」
「オーラが」
「ふーん」

オーラが似てるってコメントがなくなった時に便利だよな、と思いながら適当に相槌をうつ。

「あと…」
「んー」
「(俺のお菓子の奪い方が)」
「お腹すいたー」
「クッキー…食べた、のに」
「仕方ない」

食パンをバックから出す、平介くんが驚いた顔をしている。

「しょ、食パン(しかも一斤)」
「いただきます」
「えー」

食パンにかじりつくと平介くんがネズミだ、と呟いた、失礼な、私は人間だぞ。