「よっ、しもり」

ひょこりと顔をだせば良守はにこっと年齢に不釣り合いなほど無邪気な笑顔で私をむかえた。

「うわ、なにこれ」

よく見れば良守の前には可愛いケーキがおいてあった、まわりに作った形跡もあるのできっと良守が作ったのだろう。
男のくせに、と言ったら可哀相だがなんだか良守の見た目とは違う趣味だ。
見た目は本当にやんちゃというか、まあ言動もいい意味で馬鹿、少年って言ったら多分良守みたいな奴だと思うんだが、お菓子作りが好きって、カワイイネ。

「うまそうだろ!今までで最高の出来だ!まあ不器用なお前には作れないだろう、可哀相にな」

言葉では表せない人を哀れむような目の良守、目がうざいと私は指でぐりぐりした。

「ぎゃあああばっきゃろ!お前、目がうざいって理由だけで他人の眼球を指でぐりぐりやっていい理由にはならんぞ!」

口調がなんだか古くさいし動きもなんだか気持ち悪くて私は、いろいろうざい、とだけ言ってケーキを切り分けるために用意されたであろう包丁をケーキに刺した。
すると芸人のように良守は反応した、ほんと面白い奴。

「うわああああこれはさっき目をやられたせいでケーキが潰れてみえるのか!?包丁が刺さってみえるのか!?」
「いや私が刺した」
「嘘だろおああああああ」

その場に崩れ落ちた良守、まわりが暗い、電気がついてるはずなのに暗い、ちなみに良守はcry、我ながら寒いギャグだ。

「うるさいなあ、まだ食べれるよ」
「いや…お前……はあ…」
「うわ、本気で落ち込んでる」

良守は意外と女の子のように繊細な心をお持ちのようだ。

「………卵の殻おいしい」
「あ、壊れた」

立ち直るのに3日かかった。