誰かが道に倒れている、死体かな、人形かな、死体でも人形でも無視しよう、私が無視して通り過ぎようとしたらがしりと足首を掴まれた。

「ぎゃあああああおばけええええ」
「おばっ、おばけだと!?どこだ!いや言うな!死ぬ!」
「いやあんたもう死んでるんだろ!」
「な!……そうだったのか?じゃあ…俺もおば…おえええええ」
「吐いたー!」

私の足を掴んだ死体さんはいきなり吐いた、足にかかるかと思ったら何故かバケツを持っていてバケツに吐いた。
もしかしてマイバケツなのだろうか。
しかし何故バケツを持ち歩いているのだろうか。
この人危なそうだ。

「すみません私急いでますので」

逃げなきゃ、ここから逃げなきゃ、私は足を掴む死体さんの手を振りほどいてそそくさと歩き出す。

「まて!」

足をまたがしりと掴まれた。

「お前…憑いてるぞ…」
「いやああああなんだこいつめっちゃ怖い!」

思わず掴まれた足をぶんぶん揺らして逃げようとする、がつん、死体さんの顔に当たった。

「あ…すみません」
「…サインコサインボインボイン!すごくボイン!」
「なんか変なこと言ってる!」

もくもくと白い煙がでてきた、え、もしかしてこの人なんかすごい人?

「さんま焼いてる猫だ!」
「はっ、にゃんと!今は食事中だぞ!…あっ、ニャンパラリ〜」
「なにか思い出したように変なこと言ってる!」

私が叫ぶと猫はニャンコールはないのか!と怒った。
私がぽかんとすると死体さんがほら、ニャンコール!ニャンコール!とコールしろ!と言うので何故か私はニャンコールとコールすることになった。

「ニャンコール!ニャンコール!」
「ニャンパラリ〜」
「また言った!」
「うぬぅ…もう撫でさせてやらん」
「撫でたくないよ!私猫アレルギーなんだから!」
「にゃんと…!」
「にゃんだと!?」
「いやあんたは猫じゃないんだからにゃんだととか言うなよ!」
「見知らぬ人に怒鳴られた…」
「すぐ凹むな!」
「吐きそうだ…」
「泣きそうとかじゃなくて!?」

元々ツッコミ体質(友人談)の私ががんがんツッコむと死体さんと猫さんはだんだん凹んでいった。
黙ってしまった二人、私はふうと溜息をして帰ろうとした。
きっとこれは夢なんだ、そう、悪い夢だ。
そう思って歩き出した瞬間に私の足から何かがはえていることに気がついた。

「な、にこれ」
「やはり、だから憑いてると言っただろう、ニャンコさん!」
「うむ、睨んだ通りだ」

むくむくむく、私の足からはえるそれは大きくなっていく、意味がわからないどうなってるの。

「安心しろ、自称天才陰陽師の俺が憑いている」
「自称か!しかも憑いてるのかよ!」
「ふっ…まだツッコめるな」
「油断は禁物だぞ」
「わかっている」

死体さんは自称天才陰陽師らしい、でもわけがわからない、ぼんやりしていると死体さんが何か呟いてニャンコさんと呼ばれていた猫が私の足にはえるそれを引っ掻いた。
するとさらさらと砂のようにそれは消えた。
私はまだ理解できなくて、取りあえずお礼を言おうとして死体さんに視線を戻すと死体さんはまた死体になっていた、死体になっていたというのはつまり吐瀉しながら倒れているということだ。

「あの…ありがとうございました」
「礼ならいらん、しっかり働いてもらうからな」
「え?」
「ちょうど事務所に人手がほしかったんだ」
「え?」
「これからよろしく頼む、ちなみに俺は阿部で、こっちがニャンコさんだ」
「ニャンパラリ〜」
「いや…え?」
「事務所はそこだ」
「あの」
「取りあえず幽霊と言ったら罰金500円、おばけと言ってくれ、怖すぎるから」
「怖すぎるから!?」
「住み込みだからな」
「は?え?」
「では帰るか」
「どうなってんだー!」

それから私の毎日はゆうれ…おばけがいっぱいゲロいっぱいの毎日になる。