たとえば、彼女が好きかと問われれば答えはイエスだ。
だけど彼女にその気持ちをいつも伝えているかと問われればそれはノーだ。
当然彼女のことは好きだし、手も繋ぎたい、キスだってできることならしたい。
だが、突然手を繋ぎたいなんて言い出したら、困るんじゃないか、とか、断られたらどうしようか、とか考えると俺は行動できない。
しかし昨日俺は見てしまった、木野に彼女が相談しているところを。
盗み聞きなんてするつもりはなかったが、いつも笑顔の彼女が泣いてきたので理由が知りたかった。
彼女を泣かせた奴を殴ってやる、そう思って聞いていたら理由は簡単、俺が好きだと言ってくれない、とのことだった。
思えば彼女が俺に好きだと思いを伝えてきて早3ヶ月、俺は彼女に一度も好きだと言っていない気がする。
いや、言っていない。

「ゆうと」
「ん」

放課後、鞄に教科書やノートを入れていると彼女が俺の机の横へやってきた。

「今日も部活?」

彼女は毎日こうやって俺に聞く、多分、一緒に帰りたいんだろう。
そうだ、今日くらいは、彼女のために帰ろう、サッカーの試合にもまだ幾分時間がある。

「いや、一緒に帰ろう」
「え、部活は?」
「調子が悪くてな」
「大丈夫なの?」
「なに、一日休めば大丈夫だ、円堂に休むと伝えてくる、玄関で待っていてくれ」
「う、うん」

席を立つと、一緒に帰れることが嬉しいのか、彼女は頬をほんのり赤く染めて笑っていた、俺も嬉しくなった。
円堂に休むと伝えれば快く聞き入れてくれた、すまないと言って玄関へと走る、彼女を見つけて声をかけると彼女はにっこりと笑った。
帰り道、彼女は楽しそうにいろんな話をしてくれた、両親の話や、きょうだいの話、ペットもいるらしい、どれも新鮮で知らなかったことばかりだった。
そう言えば彼女とこうやって帰路につくのは初めてだった、いつも、寂しい思いをさせていたな、俺はそっと彼女の手をとる。

「ゆうと?」
「嫌か?」

そう言えば彼女は頬をほんのり桜色に染めて首を横にふった、そんな可愛い反応をされたらなんだか俺まで照れてしまう。
小さな公園を見つけて、俺は彼女をベンチへ誘う、嬉しそうに笑う彼女を見るとなんだかこっちまで笑ってしまう、なんだ、この気持ちは。
俺はぼんやりしていたみたいで彼女に大丈夫かと聞かれてしまった、平気だと答えて彼女の横顔を見れば先日の記憶がよみがえる。

『ゆうとがね、好きって言ってくれないの』

涙でぐしゃぐしゃになった顔を木野がタオルでふいていた、そうだ、彼女に好きだと伝えなくては。

「そ、の」
「なに?」
俺は、お前が好きだ

そう言って顔を背けてしまった、なにを恥ずかしがっているんだ俺は、彼女は、いつも言ってくれていたじゃないか。
ゆっくり彼女の方を見れば彼女はぽたぽたと涙を零していた、そ、そんなに言い方だめだったか、もう少し遠回しに伝えるべきだったか、それとももっと。

「嬉しい」

彼女は涙も気にせず笑った、その顔は今まで見てきた笑顔の中で一番輝いていた。


―――――
かけらさんリクエスト不器用な鬼道。
ちょっと不器用とは違う感じになってしまったかもしれません、すみません。
好きだけど好きってきっかけがないと言えない鬼道さんが可愛いと思います。
では、かけらさんリクエストありがとうございました。

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