放課後の教室に忘れ物をして怖いので急いで取りに行くと教室に幼馴染みの雅治がいた。

「ま」

雅治、と呼びかけて、止まった。
何故なら、雅治の目の前に女の子がいたからだ。
きっと、告白、されてる、そんな気がして、私は咄嗟にドアの影に隠れた。

「あの、仁王くん、私、好きなの」
「すまん、」

どきり、心臓が口から飛び出るんじゃないかと思った。
やっぱり、告白、だ。
しかも雅治、断った、んだ。
ふう、と息を吐く。
雅治が告白されるところなんか、何回も見たことある。
雅治は、モテるから。

「な、んで…」

女の子が、泣き出した。
やばい、本当に心臓が口から飛び出る。
このまま、聞いてたらだめだ。
ゆっくりと、動き出す、忘れ物は諦めよう、今はこの場から離れることが最優先だ。

「好きな奴が、いるんじゃ」

ぴたり、私の動きが、止まる。
雅治、に、好きな人。
そんなの聞いたことない、でも、このまま聞いてたらだめだ。私は、ゆっくりと階段の方へ歩いていく、階段につく、はあ、溜息をついて階段を下がっていくここまで来れば大丈夫だろう後ろからガタリと音がして何事かと思って振り返ると女の子が泣きながら走ってきた。
私はびくりとも動かないで突っ立っていた。
女の子が走って走って、見えなくなった。
どうしようか、忘れ物、もう一度取りに戻ろうか。
でも雅治が教室にいるだろうし、どうしよう。
気がつけば、教室にいた。

「雅治」
「なんじゃ、いたんか」

雅治が笑った、笑ったけど、いつもと違う、苦しそうな、悲しそうな、空っぽな笑み。

「ごめん、見てた」

それだけ言って忘れ物を取って帰ろうとすると、雅治が私の腕を掴んだ。
びくり、肩が跳ねた。

「そんなに驚かんでもいいじゃろ」
「ごめん」
「一緒に、帰らんか?」
「あ、う、うん」

少し吃りながら返事をする、雅治は相変わらず、空っぽの笑顔だった、なんだか、寂しくて、愛しい。
帰り道、雅治と肩を並べて歩く、いつの間にか、雅治、大きくなったなあ。
小学校の頃はこんなに身長差なかったのに。
なんだか、雅治が遠くなったみたいで、寂しかった。

「息が白いぜよ」

そう言って息を吐く雅治、なんだか小さな子供みたいで、遠くなんかなってないと言われたみたいで、嬉しくて、おかしくて、私は小さく笑った。

「最近はめっきり寒くなったのぅ」

マフラーに顔を埋める雅治、私もつられるようにマフラーに顔を埋めた。
雅治はそんな私を見てくすくすと笑った、なんじゃ真似しとるんか、と言って私の頭をぽんぽん撫でた。
なんだか馬鹿にされてるみたいでムカついたので私も雅治の頭を撫でてやった、雅治はなんだか心底嫌そうな顔をした、私はざまーみろ、と言ってあげた。

「ねぇ」

好きな人って、だれ?聞けずに、黙り込む、私には関係のないことだ。
しかも雅治の好きな人聞いて何をするっていうんだ。
協力でもするのか?

「お前さんじゃ」
「え?」

雅治はにこりと笑った。

「好きな人」

時間が止まった気がした、衝撃がはしった。
言葉の意味が理解できなかった。
私がぽかんと突っ立っていると雅治は困ったように笑って、すまん、と謝った。

「聞かんかったことにしてくれ」

そう言って私と反対の方向へ顔をむけてしまう雅治。

「やだ」

私ははっきりと言った。

「私、雅治といるの楽しいよ、好き、だよ」

くるり、雅治が振り向いてびっくりしたような顔をして、ほんとか、と聞いてきた。
私は本当よ、と答える。
雅治はなんだか、とっても嬉しそうな顔をした、こんな顔久しぶりにみた。
私もなんだか嬉しくなってきた。
突然目の前が真っ暗になる、雅治に抱き締められたのだ。

「ま」
「好いとう」

雅治の声が、匂いが、すべてすべて私の中に入ってくる。
雅治の背中に手をまわす、雅治、雅治、小さな声で呼ぶ。
雅治が優しい顔で私の頭を撫でた。
――――――
ちいへ相互記念!
全然まとまってないけど愛はあります!
では相互ありがとうございました、これからよろしくお願いします!