「妹子ってさ」

原っぱで二人並んで寝転がる、心地よい風、暖かい太陽、僕は頬の筋肉が緩むのを感じた。

「なに」
「きのこに似てる」
「は?」

この馬鹿野郎は、突然何を言い出したかと思えば僕ときのこが似てる?ふざけるな。
僕は笑顔のまま右手で拳を作った。

「拳をつくらないで!名前だよ!名前が!」
「いもこ…きのこ…」
「ね?」

上目遣いで笑う、ちょっと可愛い、いつもならここでころっと『そうかもね』とか言ってしまうんだろうけど今日は違った。
頭で考えるより言葉が先に出ていた。

「いや全然似てないけど」

その言葉と同時に拳を高くあげる。

「ぎゃー殴らないでー」
「殴らないよ」

そう言って彼女の頭にチョップする、彼女は少し身長が縮んだ、気がする。

「よかっ…ぶふぁっ」
「チョップするけどね」
「騙したな!」
「騙してないよ」
「くっそ!この!きのこ!」

彼女はそう言って逃げ出した、意外に足が速いなあ、僕はそう思いながら走り出す。

「笑顔で拳を作って追いかけてくるなー!」
「え?笑顔が素敵だ、追いかけてこい?」

ははは、ありがとう!と言えば彼女は言ってねーよ!と叫んだ。

「聞こえないな」
「ふざけんな!」

彼女は楽しそうだった、そんな彼女を見ていたらなんだかだんだん僕も楽しくなってきて、口元がほころびる。
でもやっぱりきのこと呼ばれるのは嫌なので追いかけることはやめなかった。
「どちらかと言えばー!」

僕は前を走る彼女に向かって叫ぶ、彼女がぴたり、止まる、僕も止まる。

「なにー?」
「お前の方がきのこな気がするー!」
「はあ?」
「やーいきのこー!」

へらへら笑ってやると彼女はムキーといいながら僕の所へと走ってきた。

「黙れきのこ」
「きのこきのきの?」
「きのきのきのっこ?」

意味不明なきのこ語を話す、そして二人で笑い合い、叫ぶ。

「「きのっこ!」」

意味はない、ただ、なんとなくだが、彼女と僕の距離が縮まった気がする。
彼女の手をとって歩き出す、彼女はニッコリ笑って僕の手をぎゅうと握り返してきた。

「もう妹子のこときのこって言わない」
「僕もキミのこときのこって言わない」