もし私が死んだら誰か泣いてくれるかな、誰も泣かないかもしれない、考えて悲しくなって誰かに抱き締めてもらいたくなった。
でも抱き締めてくれる相手がいない私は座り込んでわんわん泣いた。
ガチャリ、屋上のドアが開く音がした。
誰かが来たんだ、私は声をぐっと堪えた。

「貴女ですか」

外まで泣き声聞こえてましたよ、と言われた、びっくりしてドアの方を見ると木手がいた。
なんでいるの、と言うと読書です、と言って私の隣りに座った。
確かに本を持っている。
木手は泣いてる私を無視して読書をはじめた。

「うー、」
「煩いです」
「ごめんなさいね」

木手は私の方をちらりと見てまた本へと視線を戻した。
私は涙をふいた、泣くのが、馬鹿らしくなってきた。

「抱き締めてほしい」
「俺に、言ってるんですか」

ぴたり、木手の動きが止まる、私はそんな木手を見て珍しいなあと思いながらも答える。

「いや、独り言、木手は好きでもない女の子を抱き締めるなんてしないでしょ」
「そうですね」

そう言って木手は私を抱き締めた。
私はわけがわからなかった、好きな子以外は抱き締めないんじゃなかったの?
私のこと、好きなの?

「木手、なんで?好きでもない女の子を抱き締めるなんてしないんじゃなかったの」
「鈍いですね」
「そんなに鈍いつもりはないよ、ただ、信じられないだけ」
「そうですか」
「ねぇ、もっと欲張っていい?」
「はい?」
「キスして」

そう言うと木手はふ、と笑って私にキスをした、そして言った。

「満足ですか」
「うん、ていうか木手、泣いてた理由とか聞かないの?」

私は不思議に思っていたことを木手に言う、木手はまたふ、と笑って答えた。

「貴女のことです、どうせ死んだらどうとかでしょ」
「うわ、当たってるよ畜生」

そう言うと木手はなんだか随分と悲しそうな顔して言った。

「貴女がいなくなったら」
「ん」
「俺は悲しいですよ、きっと他のみんなも」
「ありがと」
「本当のことを言っただけです」
「ねぇ、木手」
「なんですか」
「好き、大好き」
「そうですか、」

あの木手がふんわり、笑った、気がした。
私も、笑う、私が死んだら、木手は泣いてくれるだろうか、くだらない考えは浮かんで消えた。