※DVされてる女の子と七松(七松はDVしてません)
















私の付き合っている人はしょっちゅう私に暴力をふるう、帰ってきた途端殴られたこともある。
理由は無断で出かけた、とかだ。
そのたびに七松のところへと足を運び、泣く。
七松に縋りついて泣くとなんだかスッキリというか不安な気持ちが消えていくのだ。

「ありがとう七松、今日はもう大丈夫」
「そうか」
「じゃあ私、帰るね」

そう言って立ち上がった時だった、七松が私の腕をぎゅうと掴んだ。

「なあ、またあいつに殴られに行くのか?」
「七、松?」
「行くのか?」
いつもの七松とは違う顔をしていた、怒っているようにも見えるし、泣いているようにも見える。

「やだ、離して七松」
「いやだ、私はもう二度とこの手を離さない、キミが傷付くのはもう見たくない」
「ば、か」
「私は馬鹿でいい、阿呆でもいい、なんでもいい、だから…もうあいつのとこへは行くな」

七松が必死に私に叫ぶ。
ああ、彼はこんなにも私を心配してくれているのか、涙が、じわりと浮かんできた。

「七松、」
「好きなんだ、キミのこと。大切なんだ、何よりキミが」
「な、なまつ…なんで貴方が泣くの」

そっと頬に手を伸ばし溢れた涙をすくう、七松はぼろぼろと涙を零した。

「泣いてなんか…ない」
「…優しい人」
「なあ…それでもまだ行ってしまうのか」
「行くわ」

ぎゅうと手を握り締める、すると七松の手から力が抜けてするりと落ちる。

「別れを告げに」
「!」
「七松も…来て、くれる?」
「ああ、私もついていこう」
「ありがとう、七松…帰ってきたら返事を言うわ」

別れを告げるとやはりあの人は私を殴ろうとしたが、七松が逆に殴ってしまった。
そして二度と私に近付くな、と今まで見たことのない形相であの人を睨んだ。
あの人はひぃと小さく悲鳴をあげてわかりましたと呟いた。
それから私達は帰ってきた。

「七松…本当にありがとう」
「私は大したことはしていないさ」
「でも本当に」
「それよりも早く、返事がほしい」

顔を赤らめて私から目を逸す七松に私は抱き付いた、七松はびっくりした様子で私の名前を呼んだ。
なに?と聞けば私はキミを傷付けない、大切にする。とだけ言った。

「わかってるわ、七松、これが私の返事よ」

七松の唇に自分の唇をあてる、七松は目を丸くして驚いていた。

「  」

名前を呼ばれて私はニッコリと笑う、七松もいつものようにニカッと笑い私を抱き締めた。
そして夕日にむかっていけいけどんどんだ!と不思議な言葉を行って私の腕を掴んで走り出した。
ねぇ七松、本当にありがとう。
目を閉じて心の中でそう言った。