「暑いね」
「そう?結構涼しいと思うけど」

そりゃあ扇風機の目の前を陣取ってアイスを美味しそうに食べていれば、窓から日差しのあたるベッドで横になってる私よりは涼しいですよ、とは言えずに黙り込む。

「なに?アイス食べたいの?」
「うん!」
「あげないよ」

こいつはまた私に意地悪をする、いやこれはいじめだと思う、いじめだいじめ、絶対いじめ。
そう思いながら私はまた横になる、くそ、暑いな。
頭がぼーっとしてきた、あれ熱中症?もしかして熱中症?

「やば…熱中症っぽい」
「そう…はい飲み物」
「ありがとう」
「見せるだけだよ、あげるわけないだろう」

ニッコリ笑ってそう言う幸村に私もニッコリ笑い返すと殴られたい?と幸村が言うもんだから私はただ謝ることしかできなかった。
平謝りってなんだか切ない。

「ほんと…だめだわ、ちょっと幸村扇風機」
「貸すわけないだろ」
「うちわ」
「ないよ」
「クーラー」
「いやだ」

いやだって、ちょっと待てよ。
ない、とか壊れてるとかならまだしもいやだって、クーラー嫌いかこの野郎。
私は畜生と思いながら目を瞑る。
あれ?確実に死に近付いてない私?

「私…死んでもいいの?」
「お前はゴキブリ並の生命力だから大丈夫だろ」
「まじっすかー」
「まじだよ」

幸村は相変わらずの笑顔だった、整った綺麗な顔だ。
女顔だ。女の私より綺麗なんじゃないか?羨ましい。
でもこれ言ったら殴られるんだろうな。
視線を感じて幸村を見る、ばちり、目があった。
幸村は笑ったまま首を傾げる。
そして言う、殴られたいの?と。

「読心術ですか?」
「いや、声にでてたよ」

私のばか、危うく殺される所だったわ。
幸村はそのへんにあった雑誌を読み始めた。
きっとテニスの雑誌だろう、少し、本当に少しだけど優しい顔になった。
私は静かにベッドの上で寝転がったまま幸村を見つめる。

「視線が痛い」
「あ、ごめん」
「次やったら殴るから」
「はっ、はい」

笑顔の幸村、私はすぐに返事をした。
幸村は満足そうに微笑んで雑誌に視線を移した。
私はまた幸村を見つめる。

「(横顔も綺麗だ)」
「よっぽど殴られたいのかな?ドMなんだね、お前」
「ごめんなさい」
「わかればいいよ一発で」
「ほんと…顔だけはやめて下さい」
「当然だよ」
「ぐっふぇ!ガチ、で鳩尾に一発…かよ」

ありえないだろ、と言えば幸村は黙りなさいとビンタしてきた。

「いったーい!ビンタ!?顔はだめって言ったじゃん!」
「ごめん、聞こえなかった」
「(畜生)」

視線を幸村から外へと移す、外では太陽がギラギラと燃えていた。
太陽よー幸村の頭に落ちてこーい
そう思った私の頭に幸村の拳が落ちた。


――――――
性格の悪い幸村、これはただのドSなんじゃ…すみません
愛はたーっぷりはいっています!
暁様リクエストありがとうございました!
     子谷