「利央、いつまで泣いてるの?」

公園のブランコに乗りながら、ベンチで啜り泣く利央に声をかける、利央は私の方を見ずに答えた。

「だって、」
「利央には来年があるじゃない」

それだけ言って空を見る、きらきら光るお星様とじんわり輝くお月様が私達を見つめている。
利央は優しい子だから、きっと自分のためじゃなくて、私のために泣いているんだと思う。
立ち上がり利央の元へ歩いていく、利央は私の方をちらりと見るとごしごしと腕で涙を拭いて私の方を見た。
そして悲しそうな顔をして私の言葉に答えた。

「俺には、来年があります、けど、先輩には」

やっぱり利央は私のために泣いていた、なんだかそれが嬉しくて、私は利央の頭を撫でた。

「ばか、そんなこと言わないでよ、私3年だけどさ、ほら、留年すれば大丈夫だよなーんて、冗、談だ、けど」

ああ、格好悪い、私。
先輩だから、後輩の前でくらい格好つけていたかったのに、泣いちゃった。

「先輩泣いてますよ」
「…うん」

こくりと頷いて利央の隣りに座る。
涙が止まらない、格好悪いとこ、見られたくないのに。

「利央ー」
「なんですか」
「頑張ってね」

そう言って泣きながら無理矢理笑うと利央はまた泣きそうな顔をした。

「泣かないの」

そう言うと利央はだって、だって、と泣き出してしまった。
「私がいなくても、利央は頑張れる」
「無理です、俺、」

弱音をはく利央の頭をポンと叩いた。

「無理じゃないよ」
「先、輩…」

利央の目からぼろぼろと涙が溢れてくる、私は笑顔で頭を撫でてあげた。

「よしよし、」

何分経っただろう、利央が泣きやんだ時、利央は俺はもう大丈夫です。と笑った。

「そっ、か」
「先輩、泣いていいですよ」

利央が両手を広げて笑う。

「な、に、格好つけてんの、よ、ばか」

止まっていた涙がまた溢れてきた。

「俺の胸で泣いて下さい」
「ば、か」

そう言って利央の胸にそっと飛込む、優しい匂い。暖かい。
涙が一粒、頬を伝って落ちた。
私達の夏は終わって、はじまった。