ばかばかばかばか、もう死んでまえ、消えてまえ消えろ頼むから消えろ。
土下座するから私の前から消えろ。
とんとんとん、と包丁で胡瓜を切り刻む。
くっそムカつく、まじムカつく、めちゃくちゃムカつく。
なんやねん、私の告白邪魔して、何が楽しいんや。
折角私が勇気だして好きな子に告ったのに、こいつ借ります、で返事聞く間もなく強制連行。
ムカつくムカつくムカつく!
財前光、あいつ幼馴染みやからってありえへん。
とんとんとん、胡瓜が切り終わったので玉葱を冷蔵庫から取り出す。
ムカつくムカつくムカつく、光めっちゃムカつく、どないしたろ、刺したろか!

「刺したろか!」
「うおわっ、なんやねん危な!」

包丁を持ったまま振り返るとそこには光が立っていて、まじでこのまま刺したろかと思った。
なんやねんほんとこいつ苛々絶頂の時に私のとこ来やがって。

「包丁置け」
「なんやねんほんとムカつく今料理してんねん包丁置けるわけないやんまじ頭おかしいんちゃう?あほ」
「あほ言う奴があほなんやで」

むっきー!かなりムカつく、あかんもうムカつくかなりムカつく殴りてぇ叩きてぇ刺してぇ。
玉葱を微塵切りするために皮を剥く、取り出す包丁はおいた。

「置いとるやん」
「………あほ」
「だからあほ言う奴が「あほなんでしょ?私あほです、それが何か?てか何しに来たんやって」

包丁をまた持って玉葱をとんとんとんとん切り出す、光は溜息ついてた。
なんやねん溜息って、ムカつく、いちいちムカつくやっちゃな!
私が苛々していると光が用件を話してきた。

「あいつが」
「あいつ?」

意味わからん、ほんま消えろや、思てたら光はほら、その、お前が告った奴。と言ってきたのでやっと誰かわかった。
てか光私の告った人とあの後会ったんかい!

「他に好きな奴いるから断ってほしいて言われたん」
「ふーん」
「ふーんて、可愛ないやっちゃな」

うっさいわ、と素っ気無く答える、やばい、涙が止まりそうもない。
気付かれとうない、こいつにだけは気付かれとうない。

「……泣いとん?」

あかんあかん気付かれた、別にと答える、もう関わんなや、私お前のこと大ッ嫌いや。

「泣くなや」
「だから泣いてな「悪かった」

その言葉と同時に抱き締められた。意味わからん、ほんまウザいこいつ。

「は、てか、抱き締めるなや」
「嘘や、あいつお前のこと好きや、」
「は」

こいつさっきからなに言ってん、全然わからへん。
わけわかめや。

「でも俺も好きや、離したない」
「な、に言って、」

わけわからへん、ほんま、なに言ってんこいつ。

「離したない」
「あほ」

何故か、止まりかけた涙がまた溢れてきた、止まりそうにない。

「私、かて、好きやった、けど光、他の女とばっか話、して、だから、諦めて、」
「妬くかなあ思て」

光はそう言って苦しそうに笑った、なんやねん、私の方が苦しいねん。

「あほ」
「俺はあほや」
「でも、好きや」
「俺もや」
「光泣いてるん?」
「玉葱が目ェにしみるねん」
「………あほ」
「あほ言う奴があほや」

そう言って二人で笑った、さっきまで光に対して芽生えていた小さな小さな殺意はどっかに飛んでいったようだ。