※10年後でジルは生きている上にヴァリアーに居ます。「はっぴーばーすでー」の続きのようなものです。


















冬になれば日が暮れるのも早い。そして日が暮れてしまえば冬の寒さは増す。だから冬は嫌いだ。と言いたいけど冬は好きな方だ。寒いのはあまり得意じゃないが、なんせ冬には雪が降る。辺り一面が白銀の世界を化す。とても素敵じゃないか。

現在訳あって一人称は日本に来ている。まぁ、用事があるのはボスの方であるが。事はジルとベルの誕生日を祝っていたあの日まで遡る。ボスだけ居ないもんだから興味ないのかと思いボスに電話を掛けてみた。すると自室で資料と睨めっこていると本人談。34歳にもなって睨めっことか言うから吹いてしまい、それがボスの怒りを買ってしまったのか本来であればボスだけが来るはずの日本に連れてこられたというわけだ。勿論、誕生日であっただけの理由でジルとベルも来ている。
「あーっ!くっそつまんねぇ!なんで応接室でただ待ってなきゃいけねーの!」
「クリスマスヴだってのになんでこんな暇な事してんだよ俺等!」
今までソファに凭れていたジルとベルは退屈してきたのか、体を起こし頬杖を突いたり貧乏揺すりをしたりと苛立しさを露わにしていた。短気、短気と散々言われる一人称だがこの双子を見ているとそうでもないような気がしてくる。
「もう駄目、王子マジ我慢の限界死にそう」
「同じく。待ってろとか言っていたけど、こんなに待つとは思わなかったわ」
貧乏揺すりをやめたかと思うと脱力しソファに凭れ、また勢いよく体を起こす。さっきからこれの繰り返しだから相当つまらないのだろう。
「つーかボスまじおせー」
「中で何してんだよあいつ」
自分等の上司でありながらボロクソ言い始めるジルとベル。こういうとこは相変わらずだと思う。
「ししっ、ボスの事だからアレじゃねーの?」
「でた。しっしっし、ボスも物好きー、じゃねぇよ!ヤんなら待ってろとか言うんじゃねーよ!こっちの身にもなれっての!」
「わっかるー」
なんだこの26歳児は。発情期の中学生か、とでもツッコミを入れたかったが入れたら入れたで変な絡まれ方しそうで止めた。あとめんどくさかったと言うのもある。ジルとベルにやっていた視線をまた本へと戻す。
「あーボス何一人で性夜楽しんでんだよ」
「しっしし、なーに上手い事言ってんだよ」
「ししっ、そー思うなら座布団くれっての」
駄目だ。こいつ等と同じ26歳として恥ずかしくなってきた。悪い意味で。呆れてしまい思わずはぁとため息を漏らしてしまった。
「おーい、何ため息漏らしてんだよー」
「幸せ逃げるぜ?あ、って事はクリクマスは一人決定だな!」
「しっししし、傑作だわ!」
二人して両手を叩きながら大笑いしていたがどうもイラっと来ない。寧ろ、さっきから薄々と気が付いては居たんだが、
「今日ってクリスマスイヴだったんだな…」
読んでいた本を閉じ小さく言った。つもりだった。

「え!?」
どうやら一人称の小さな独り言(のつもり)は二人に届いていたらしく、先程まで馬鹿のように笑っていたジルとベルがピタッと動き止め此方をまじまじと見てきた。
「な、何?」
「名前…、彼氏が居ないからってクリスマスの存在否定すんなよ…」
「彼氏が居なくとも俺等が居るじゃねーか!」
「え、いやなんの事だよ…」
本当に忘れていただけなのに何故か変な方向に解釈されてしまった…。ヤバい、めんどくさい事になりそうだ…。そんな一人称の心境などお構いなしにジルとベルは一人称を挟むように座り、手を取った。
「ししっ、恍けなくたっていいんだぜ?」
ニヤニヤしながら左に居たジルが肩へ腕を回す。そして右に居たベルが顔を耳元へ近づかせ同じくニヤニヤ笑う。こういう雰囲気苦手なんだが…。
「そーそー、俺等と一緒に性夜を楽しもうぜ?」
ちょっとイラっとしたので言い終わる前に腹に一発殴ってやった。
「うえっ、なーにすんだよコノヤロッ」
ソファの端に置いてあったクッションを力いっぱい顔に押し付けてきた。殺す気かよ…。怒らせたのかと心配になったがそうでもないらしく、すぐに退かしてくれた。と、思った矢先後ろからジルが体重を掛けて凭れてきた。
「おわっと、相変わらず軽いな。ちゃんとご飯食べてるん?」
「え、そこかよ」
「相変わらず普通の人とずれてんなー」
イラっとして本で叩きたかったが自分でも人より浮いているのは自覚済みだしジルとベルが軽いのも本当だ。てか、
「何どさくさに紛れてあんたも凭れてんだよ」
「俺も軽いからバレないかなーって思って、しししっ」
どや顔なのかこの体制からは分からないがきとそうだろう。まぁ、二人の体重を合わせたところでんなも軽い、そう言えるようになったらいいが一応女として生きている上そんなに怪力じゃない。正直重いし、死ぬ。眼鏡もずれてきたし…。とは言え伊達眼鏡なんだが。
「そ、そろそろやめてくれませんかねー王子様達」
「ししっ、なーに、もう限界?」
「誰だよ軽いって言った奴はー。しししっ」
この双子の事だから更に体重を掛けてくるなとぎゅうって目を瞑ったが、あっさりどいてくれた。あれ?姿勢と眼鏡を戻しジルとベルを交互に見る。何時ものようにニヤニヤと笑ってはいたんだが、雰囲気が、その、なんだか穏やかで…。数分前まではボスが遅いと不機嫌だったのにすっかりご機嫌だ。いつまでたっても可愛いなと思いながら閉じた本を再び開きもう一度目を通す。それからジルもベルも特に何もして来ることなく相変わらずソファに凭れていた。
「ししっ、こんなクリスマスイヴも悪くねーなー」
「だなー。そーだ、明日自由にしてもいいらしいし、どうする?ケーキ作るか?」
「…何故一人称に聞く?」
嫌そうにジルとベルを見れば声を揃えて
「なんとなく!」
嬉しそうにニイっと笑った。




(小さい頃から変わらない)


111224







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