※10年後でジルは生きている上にヴァリアーに居ます。

















「…ベル」
甘ったるい雰囲気の中俺の首に腕を回す名前。
「んー?」
それに応え名前の頬を軽く撫でると嬉しそうに目を細めた。
「誕生日、おめでとう」
「あー…、ん、サンキュ」
今まで誕生日だと言わないとおめでとうなんて言わない名前に祝って貰ったと思うとなんだか嬉しくて頬が緩む。それを隠す為名前の首元に顔をうずめ、ぎゅっと抱きしめたが何故か違和感を感じた。それと、
――おっさんくせぇ………。
何時もの名前ならラベンダーの香りがするんだけど。念の為に今抱きしめている人の顔を確認したら、

「ってレヴィじゃねぇかよっ!」
「ぬあっ!?」
勢い余って上半身を起こすと何故かそこにはレヴィが居た。最悪な目覚めだ。いつもなら名前かジルが起こしにくんだけど。
「何でお前居んだよ」
「ルッスーリアが起こして来いと…」
んな事は知ってんだっつーの。俺があからさまに不機嫌な態度をしてるってのに、それに気付かないレヴィにイライラを感じつつも、取り敢えず我慢した。さっすが俺
「そーゆー意味じゃなくてさー。名前とジルは?」
「名前は知らん。ジルは先程起こしに行き、風呂に入ってる」
「はぁ?」
んだそれ。呆れて頭を掻きシャワーを浴びようとベッドから出る。
「つーかさぁ、お前いつまで居んだよ」
ナイフをチラつかせればビクリと体を一跳ねさせ慌てて部屋から出て行こうとした。扉を開ける途中、何かを思い出したのかもう一度俺を見て
「ベル、誕生日おめでとう」
と言い部屋から出て行った。何時間経っただろうか。いや、何時間も何分も経っていないだろう。けど俺にとっては10年、20年くらい時間が止まったような気がした。
「…うげ………何、あの夢まさかの正夢かよ………」
抱きしめてはいないが。気持ち悪くなって思わず身震いした。
「王子の誕生日だってのに、朝っぱらから最悪」
長めのため息をついてもう一度頭を掻き浴室に向かった。

シャワーを済ませ身支度もした。ししし、今日もばっちし。のろのろと会議室へ向う途中いろんな奴等からおめでとうございますと祝って貰った。ま、王子だしどーぜんじゃね?それに悪い気はしねーしな。
「おっくれましたー」
大きな扉を開くとどうやら会議は終わったらしく、使用人達がテーブルの皿やらグラスやらを片付けていた。
「ありっ?」
っかしーなぁ。普段なら俺が遅れてきても会議始まんねーのに。そんな俺を余所に使用人達は着々を自分等の仕事をしていた。
「なー」
近くに居た使用人に声を掛けた。ご丁寧にも、
「はい。ベルフェゴール様、おはようございます。そしてお誕生日おめでとうございます」
だってさ。こいつの声に気付き他の奴等も同じセリフを繰り返す。悪い気はしねーけど人形くせー。にしても暗殺部隊の使用人だってのに真面目だわ。って感心してる場合じゃなかった。
「ん、今年もサンキュ。ところでボス達は?」
「はい。ザンザス様は自室へ、スクアーロ様と名前様はルッスーリア様に連れられ食堂へ、レヴィ様とフラン様は先程任務へ。ジル様はお目に掛っておりませんが、談話室にてお茶かと。」
「ふーん、サンキュ」
レヴィとフランで任務ってのも珍しいが気になるのが名前達だ。朝っぱらから食堂で何してんだろ。腹へったし、行ってみっかー。


「…は?」
食堂に行ってみると扉の前には名前達の匣が見張りをしていた。関係者以外立ち入り禁止ってやつ?なーんかムカつく。

ま、しょーがねーからジルが居るであろう談話室に行ったら誰も居なかった。
「あーあ、くそつまんねぇ!」
勢いよくソファに腰かかり伸びをしながらもたれていたら発見した。
「しししっ。なーんだ、そこかよ」
ベランダの方でジルが本を読みながら紅茶を飲んでいる。

「なーに読んでんだ?ジル」
軽く鳩尾にチョップをかましてやった。つーかちっせぇ頃から思ってたけどジルって暇さえあれば本読んでんだよなー。何が面白いんだか俺にはサッパリ。
「いって、何すんだよ!」
「人の質問に答えろっつの」
まぁ、聞いたところで正直興味ねーけど。ジルの首元に顎を置き少し本を覗く。
「あー、これか。名前に貸してもらった本。魔術がどうこうだとか。」
前言撤回。ちょっと興味あっかも。名前の読む本って地味に面白かったりする。つーか暇つぶしになる。
「ししっ、そういえばあいつ好きだもんなー、そーゆーオカルト系の。面白い?」
「まぁまぁってとこだな」
「ふーん、読み終わったら貸せよ」
「名前に聞けっつの」
「俺に言われても俺のじゃねーから」と席を立ち、談話室から出て行こうとした。
「お前、どこに行くの?」
「名前んとこ。食堂だっけか」
親指で扉を指しニィっと笑うジル。妙に楽しそうだが食堂はさっき俺が行ってきた。そして匣が扉の前で見張っていた。この事を伝えると
「は?お前知らねーの?」
なんて言うからちょっちカッチーンときた。寧ろこっちがは?って聞きてーわ。
「どーゆー意味だよそれ」
「いや、10時になったら食堂へ来いって。今朝名前からメール来てたぜ?」
メール?そういや今日まだ携帯開いてねーな。ポケットから携帯を取り出し確認してみた。確かに名前からのメールが入ってる。
「な?」
「気付かなかったわ」
お前の事だからんな事だと思ったぜと俺の手を引いて食堂へと向かう。
「ししっ、ジル、お前楽しそうだな?」
「は?なーに言ってんだよ!今日俺らの誕生日だぜ?しかも名前からのメールだぜ?珍しくね?」
しししっ、そーゆーことか!ジルの言葉で俺もなんだか楽しくなってきた。そしてジルの手を振りほどき、小さい頃以来の勝負を挑んだ。
「ジル、どっちが早ぇーか勝負だ!」
「しっしし、望むところだっつーの!」



「俺がいっちばーん!」
「俺だっつーの!」
ほぼ同時に扉を開くといい匂いと共にクラッカーの音、おめでとうと言う声が俺等を包んだ。
「しっししし!」
「サンキューな皆」
ボスは居なかったけれどエプロンをしたスクアーロ、ルッスーリア、と名前。どうやら任務というのは嘘だったらしく手にノリがベッタベタなレヴィとフラン。
「う゛お゛お゛ぉ゛い゛!今回はお前等双子が揃った記念だからなあ゛あ゛ぁ゛!」
相変わらずうるせーけど優しかったりするスクアーロ。
「沢山作ったし、沢山食べてね、ジルちゃん、ベルちゃん!」
時々本気でキモいと思ってしまうけどヴァリアー(ここ)のお母さんの様な存在のルッスーリア。
「誕生日だからってあんま調子にのるな」
最近加齢臭がすげーけど暇つぶしに弄ってて面白いレヴィ。
「ミー達頑張ったんで死ぬほど感謝して下さいねー。手とかベッタベタなんですからー」
すっげームカつくけど面白い反応する可愛くない後輩のフラン。
「しっしっし、王子だしこれぐらいじゃ全然嬉しくねーし」
「は?ベルお前すっげー嬉しそーな顔してんのにか?ししっ」
「うっせー、お前もじゃねーか」
お互いに軽い足蹴りをしながら皆に感謝し、名前の前まで来た。
「皆が祝ってくれてんのにお前祝ってくんねーの?」
「相変わらず冷たいぜ」
皮肉を言いながらジルと俺とで名前の方に手を置いた。
「うっわー、もう、ほんとうざったらしいなこの双子は!あんた等なんかこれ首に巻いて窒息死しとけっての!」
唯でさえ短気の名前は俺等の絡み方にイラっとしたのかテーブルに置いてあってプレゼントらしき袋を投げつけてきた。
「っと」
「んだこれ」
中身はボーダーの紫のマフラーだった。ジルも同じマフラーらしい。でもどっかで見たことあんぞこれ。
「なーなー、これってさー」
「名前も持ってなかったか?」
ニヤニヤしながら言ったもんだから更にイラっときたのか片手で額を覆い大きなため息をついた。
「そーだよ。お揃いだよ。お生憎紫にしか目がいかないもんだから気が付いたら同じの買ってましたよ!これで満足か!」
半ばやけくそのように叫んで説明しまたため息をしながら中指で眼鏡を押し上げた。つーか…
「ししっ、選び方てきとー」
「姫として有るまじき行為だなー」
それでも名前からプレゼントを貰えるのは嬉しいけどな、俺もジルも。
「すみませんでしたねー、これもプレゼントとして献上しようと思いましたがそんな事言うんで棄ててきますねー」
テーブルにあったケーキを持って本気で棄てに行こうとした名前。
「ちょ、待った!悪い、俺等が悪かった!」
「この通り謝るから、機嫌直せっての」
二人して少し前かがみになりながら顔の前で両手を合わせる。チラリと名前を見ればどうやら先程の怒りは演技のようで、くすくすと笑っていた。
「嘘、嘘。じょーだん。折角作ったケーキだし棄てるぐらいなら自分で食うっつの。でもこれ、書いてあるんだよね〜」
Happy birthday,Jill and bell!名前が持っていたケーキにはそう書いてあった。
「だから一人称食えねーんだわ。お二人さん、食べてくれるかな?」
先程の言葉からしてこのケーキ、もしかして名前が作ったのか?ジルとお互いに顔を見合わせ、ニイっと笑い、
「勿論です。俺等の愛しのお姫様」




(ししっ、まさかお前が祝ってくれるとは思わなかったぜ?)
(そーそー、もっと素直になれっての)
(流石双子。二人して鬱陶しいな)


111222







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