気づいた想い

「趙雲殿!不審者はこの姜伯約が捕らえておきました!!」
ビシッと敬礼を決める姜維の足元には―――
「馬超殿っ……!!」
後ろで手首を縛られ横たわるなんとも哀れな同居人の姿が。
「大丈夫ですか!?姜維なんてことを…」
「あれ……?(なんか怒られてるっぽい;)」
「これはどういうことなんだ?」
「すみません!私がなにも伝えず…」
   ぐうぅぅぅぅう
趙雲の言葉を遮るよう腹の虫が鳴り響いた。
「それより子龍、腹減った」
「すぐ準備しますね」ニコッ


「改めまして、こちらは会社の社長で…」
「劉玄徳だ」
「こちらが諸葛亮殿。こっちは…」
「姜伯約と言います。先程はすみませんでした」
「ごめん姜維。私が悪かったよ」
「俺の名は馬孟起。故あって今はここに置いてもらっている」
「馬……?」
名前を聞いてぴくりと眉を動かす諸葛亮。
「まぁ自己紹介はこれくらいにして皆頂こうではないか!」
「はい!たくさん食べてください」

そこからは鍋を囲んで馬超への質問が飛び交うが、どれも曖昧に受け流していた。
「そういえば歳はいくつなのだ?」
「21」
「えぇ!?!?」
それを聞いて大声をあげたのは趙雲だった。
「何だ趙雲、知らなかったのか?」
「はい、姜維と同じか1つ上だと思ってました」
((大丈夫か?この人騙されてるんじゃ…))
師弟は同じことを思った。
「ではそなたも飲めるではないか!趙雲も遠慮せず飲みなさい!」

酒が入ったことで場の雰囲気も賑やいできた頃、姜維は恐る恐る馬超に声をかけた。
「先程は失礼しました」
「あぁ、何も知らなかったら驚くよな」
それほど怒ってはないようでほっと胸を撫で下ろす。
(そんなに悪い人じゃないのかな)
そう思ったが人のいい趙雲だけに心配だ。それに大好きな先輩の家に住みつくこの得体の知れない男がなんとなく気に入らない。

「おーい!ちょうう〜ん!!おーきーろー!!」
「相変わらず趙雲殿はダメですね」
机に突っ伏して寝息をたてる趙雲に馬超は驚いた。
「もう酔ってるのか?」
「趙雲殿はお酒弱いんです」
「我々もそろそろ帰るとしましょうか」
「そうだな〜馬超!趙雲をたのんだぞー!」
ハハハハと酔っ払って豪快に笑う劉備は諸葛亮に引っ張られて帰って行った。

嵐が去った感覚だ。部屋の散らかりようと夢の中へ沈んだ趙雲を見やって馬超は深い溜め息をついた。

「子龍、風邪ひくぞ」
肩を揺さぶればうっすら開けられる瞼。
「あれ?劉備殿は……」
「もう全員帰ったぞ」
「……すみません、いきなり連れてきて」
「いや会えて良かった。あんな社長もいるんだな」
ふふっと笑い声が聞こえたかと思えば、次には寝息に変わる。眠りは深いようだ。

今度は苦笑交じりの溜め息をひとつ、馬超はひょいと趙雲を抱えて部屋まで運ぶ。ここ唯一の一人部屋にはじめて足を踏み入れたが彼らしいシンプルな部屋だ。ベッドに降ろし布団をかけて暫し趙雲の寝顔を眺めていた。


「―――――っ!!!」
自分は今、何をした?無意識だった。趙雲の額に手を伸ばし、己の唇が触れた箇所を親指で擦るように撫でる。

「そうか、俺は」

出会ったあの瞬間から多分自分はこの男に好意を寄せていた。

規則正しい呼吸を聞きながら今更恥ずかしくなり熱が顔に集まるのを感じる。窓から入る月の光に追い出されるように馬超は部屋を後にした。



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