出会いは突然に
「持っててよかった」
水色の折りたたみ傘をぱっと空に広げ、青年はやや足早に自宅へと向かった。提出書類を仕上げるため残っていたら時刻はもう22時を回っていたのだ。
晩御飯はどうしようかなどと取り留めもないことを考えていると、いつもの見慣れた狭い路地にあまりに非日常な光景が飛び込んできた。
「ひ、人……?」
遠目で雨のせいもありはっきりとは分からないが、人が倒れている。気付けば水溜まりも気にせず青年は走っていた。
「大丈夫ですか!?しっかりしてくださいっ」
必死に肩を揺さぶるが身体から伝わってくる冷気に恐ろしさを感じる。どうしよう…まさか死んでるのか?気が動転してその場に固まってしまう。
「!」
服の裾を力なく掴まれる。雨音が支配する中で青年の耳には確かに声が届いた。
「た、すけて……くれ」
そう
出会いはいつだって、突然。
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