短編小説 | ナノ

狂い行く世界







「狂ってる」

「‥今さらだね」


彼は言う。

血まみれで、私のところに来るなり言った。


キミの彼氏、殺しちゃった。


しかも嬉しそうに。

しかも当たり前みたいに、私の隣に座ってニコニコとお茶を飲む。


「だってさ…」


血の臭いに、顔をしかめたが彼は気にもしない。


「知ってるでしょ?ボクと20年も一緒にいたんだから」


ボクはキミが大好き。


「だから…まあキミが彼氏を大好きならそれはそれで良かった」


キミの好きなものはボクも好きだから。


でも昨日泣いてたでしょ?

アイツのせいで、泣いてた。


ハッとした。


何で、知ってるの。


彼は綺麗に笑う。


「キミを泣かせるようなヤツ、キミの隣にいて欲しくないの」


昨日キミが泣きながら家の前通ったの見たから。


「だから別れてって言ったらアイツ…」


急に彼は、笑みを消す。


「浮気は遊びで、キミと別れる気はないって」


彼の手が頬に触れる。冷たい、思わず彼の手を退けようとして、しかしその手を捕まれる。


「キミがいるのに、他の女に手を出して、キミを泣かせたのに遊びだから別れない?ふざけたヤツは嫌い」


ソファーに押し倒される。


「だから殺した」


狂ってる。

昔から良くわからない幼なじみ。
でも絶対に私を裏切らない。

その優しさに甘えてたのは私。



彼氏が殺されたのに、


彼にこんなにも思われていることが嬉しい。


「ねぇ…ボクじゃだめ?」


不安げに揺れる瞳が愛しい。

最初から、コイツにしとけば良かった。


「ダメじゃない…」


狂った彼を作ったのも、

受け入れたのも私。


「大好きだよ」








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