短編小説 | ナノ

星見上げ





「‥凄い星」



思わず呟いた。

つられて全員が空を見上げる。



「あれなんだっけ?」



3つ並んだ星を見て、先輩が首を傾げる。



私は白い息を吐きながら答えた。



「オリオン座です」



「冬の大三角形ー!」



言いながら、部長がトイレに入って行く。


クスクス笑って私も先輩とトイレに。









出てくると、
先生が自動販売機でコーヒーを買っていた。


私も何と無く、
蜂蜜レモンとか言うのを買う。



「あれがカシオペアです」



先生が缶コーヒー片手に空を指差す。


街では見れない
カシオペア座の三等星がはっきりと見えた。



「だから北極星は‥木に隠れて見えへんな」



苦笑いする先生につられて私も笑った。


部長と理科専修の同級生が、西の空を見て首を傾げていた。



「あそこの星、めっちゃ明るない?」



言われて、確かに明るい星がある。



「一等星かな?」


「恒星で一番明るいのは大犬座のシリウスだから、あれは恒星じゃないと思います」


「良く知っとるな」



そりゃ、昔は天文学者になりたくて必死に地学を勉強したから…



「じゃあ惑星か、電波塔かな」



今ここにいるのは、
いつの間にかその夢が過去になっていたから。



「そうですね」



こんなふうに星を見ることは故郷でさえなかった。


そしてこの先、二度とないかもしれない。





澄んだ夜空に別れを告げて、
私たちは帰るため、車へと乗り込んだ。







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