短編小説 | ナノ

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「‥なにこれ」


「お茶です」


「見れば分かるよ…」











お茶と妻























最近政略結婚した。
相手の名前はアタナシア・エクティス。納との貿易で一代で大商家に成り上がったセンリ・エクティスの娘。

実は結婚式で初めて会った。無駄に化粧が濃いが、おそらく美人。あんまり興味ないから年齢とか知らない。多分、アリアより年上だろうけど、知ったとこで「だから?」って感じだし。


「で…」


無駄に広い部屋の住人が増えただけ。
ついでに寝室にこの女のベッドが増えたけど、興味ないから手をつけてない。


夫婦の営み、なにそれ美味しいの?


みたいな。


夫婦ってより、同居人みたいな感じ。むこうさんもなんも言って来ない。まあ楽だからいいけど。結婚前とほとんど変わらない生活‥


「どうぞ」


そう、このテーブルに毎日、てか朝と夕方と寝る前に出てくるカップ以外は。


「‥飲まない」


「白茶というお茶です」


「誰も茶の説明求めてない」


「飲まなくてもいいですよ」


「今の台詞は一つ前の俺の言葉への答えだよな?話が噛み合わないんだけど」


「解熱剤としての効果と夏バテ解消に効果があります」


「だから聞いてないから。あと、別に熱ないし、今冬だから、夏バテしないから」


会話が微妙に噛み合わない。なんでかずれたことを言われる。それとも俺の話し方が悪いのか?


「てかお前はいくつ茶を持ってんだ」



結婚してからしばらく経つが、お茶が一度も被らない。それとも俺の勘違いだろうか?


「80種類くらいです」


サラッと答えられて、ああそうかいと思って…いや、思えない。


「‥多くない?」


「納はお茶が豊富ですから」


ふんわり笑ってアタナシアはソファーに座り縫い物を始めた。メイドにやらせりゃいいものを、身の回りのことは基本的に自分で行うタイプらしい。アリアと一緒か。


「お前、嫌にならないのか?」


俺の妻。貴族ではないアタナシアが苦労するだけなのが目に見える。彼女は顔を上げて、コテンと首を傾げた。思案した後に、小さく頷いた。


「少し。均等に縫えなくて」


「‥縫い物じゃない…」


やっぱり会話が通じない。もう意志疎通は諦めようか。そう思って俺が明日の服を用意しようと立ち上がると、彼女は唐突に言った。


「明日は水色ですよね」


「なにが」


「ネクタイです」


ネクタイの色なんて気まぐれ。だが確かに、明日は水色にしようかと思っていた。なんでわかったんだ?


「なんとなく…ベッドの上に揃えておきました」


言われて、寝室を覗き込むと確かにスーツ一式が枕元に揃えてあった。ネクタイは水色。スーツも、明日着ていこうと考えていたものだった。



俺は妻がわからない。



「あと、手袋新しいの買いましたから、良ければ代えてくださいね。クローゼットの中にあります」


「なんで手袋の入り用知ってんだ…」



だが妻は、俺の考えが分かるらしい。



本当によくわからない女だ。


「なんとなく…第六感?」


ふんわり笑うアタナシアに、なんかもうコイツが妻でいっか、とかもうどうでも良なってしまった。


































「あ、指に針が…」


「よそ見して縫い物するなー!」


いや…ただ単に、俺はこの女から目が離せなくなっているだけなのかもしれない。





fin.


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