短編小説 | ナノ

天狼星





「セイリオス」



その声に、顔をあげる。



「やめてくれ」



苦笑いを溢し、空を見上げる。



「どうして」



名前の由来が、空に瞬く。

彼女の白い息が暗闇にフワリと広がった。



「どうしてって…」




セイリオス


“焼き焦がすもの”




「不似合いだ」



何処までも冷めた自分とは無縁な名前。


何故あの青い星に
人間はその意味を込めたのだろうか。



「似合いますよ」



「何故」



彼女がクスクス笑う。



「私を暖める程度には熱いですよ?」




だって私、
アナタに恋い焦がれたんですから。




言われて
思わずにやけた。



「狼を星に変えるとはな」



全く、勝てない。



そう呟くと彼女は首を傾げた。



「オオカミ?」



「母は納出身でな。あの星は天狼だと」



「じゃあ私、無愛想な北のオオカミに食べられちゃったんですね」



笑う、その彼女を抱きしめた。



「シリウス様?」



驚いた彼女が、普段の名前を囁く。



「狼より…焼き焦がすほうが良いかな」



言えば、彼女が声を上げて笑った。

つられてシリウスも笑う。



























空で、天狼星が瞬くころ
まだ彼の妻が生きていた頃の話‥







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