HAPPY NEW YEAR & HAPPY BIRTHDAY
「兄様!」
ピョコンとウサギのように現れたのは、たった一人の妹だった。
無邪気なようで聡くて、幼い癖に気を遣ってばかりな、少し子どもらしくない、そんな妹。
「エルザ…どうした?」
「お誕生日おめでとうございます!」
隠しきれない、彼女からしたら大きなプレゼントを必死に背中に隠しているその姿が嬉しかったし、可愛かった。
「ありがとう」
プレゼントなんてなくても、言葉だけで嬉しかった。
「プレゼントです!!」
差し出されたのは、自分と、父上と母上とエルザの描かれた絵だった。
「ありがとう。誰に描いてもらったんだ?」
「水晶の兄様の…えっと、一番上のお姉さんです」
「マーガレットか」
「はい!」
妹が俺にくれた唯一の“モノ”だった。
「‥陛下?」
声に、目を覚ました。昼間から寝てしまったらしい。俺にしては珍しい。
懐かしく遠い昔の夢は、少しの幸福感と寂寥感を俺にもたらす。もう少し見ていても良かったが、過去の幸せな時間より、俺を起こした人物の方が大切だと思うようになっていた。
「ベルか」
妹は消えたが、代わりのような存在ができた。最初は、どうにかして記憶を呼び起こしてあの事件の犯人を知ろうなんて思っていたが、そんな気はいつの間にか消えてしまった。
「誕生日おめでとうございます」
「ありがとう」
自分の誕生日なんて興味ない。
でも、
「あの…イチゴタルト‥見た目はあれですが味は多分大丈夫‥でしょうか?」
「なんで最後疑問形?」
こうやって、誰かに祝って貰えるのは嫌じゃないなって思えるようになれた。
俺の誕生日は、
祝ってくれる誰かに感謝する日「ベル、タルトの中からイチゴのヘタが‥」
「す、スミマセン!!」