短編小説 | ナノ

happy valentine day 5




夜のパーティー会場を抜け出し、いつものように庭に行くと、いつものようにユナがいた。


「ユナ」


赤い髪がビクッと揺れ、木陰からユナが現れた。手を後ろに回し、何か隠しているような様子に、フレイムは口元を緩める。


「チョコくれるよね?」


当たり前のように尋ねるフレイムに、逆にユナは慌てた。どう切り出そうか考えていたのに、まさか催促されるとは。


「あの、その、美味しくないと思うので食べない方がよろしいのではと思いまして…」


「ないの?」


「ありますけど…」


「ちょうだい?」


ここまで言われてあげない訳にも行かず、ユナは箱を差し出した。


「どうぞ‥」


フレイムは箱を受けとると、直ぐにそれをあけた。中にはチョコが6つ。生チョコが入っていた。見栄えもかなり良い。ちなみにイザベルと違い、ユナは自分で全てやってのけた。


「なんだ、できてんじゃん」


「見た目だけです」


相変わらずネガティブ発言。まあユナは謙遜するからな、とフレイムはユナの言葉をあまり気にはしない。一つ食べようとしたフレイムは、しかし何か思い付いたらしい。


「ねぇユナ」


「はい」


「食べさせて」


「‥ふぇ!?」


冗談、ではないらしい。ニコニコとユナを見つめるフレイムに、彼女は羞恥のあまり唇を震わせた。


「無理です!!レオ様ご自分で食べられますでしょう!?」


「じゃあユナ食べる」


「な…ン」


いきなり唇を塞がれる。触れるだけのキスであるが、ユナは相変わらず慣れない。


「ダメ?」


「ダメです!!」


全力で否定するユナに、むぅとフレイムは少し拗ねる。


「じゃあチョコ食べさせてくれるよね?」


「レオ様の変態!」


「今さらだよ」


開き直っているフレイムにかなわないと悟って、ユナは仕方なくチョコを一つ摘まんだ。


「あ、あーん」


真っ赤になりながらもユナはチョコをフレイムに差し出す。パクっとそれを口にしたフレイムは、普段の冷たい無表情はどこへやら、満面の笑みを浮かべた。


「美味しい」


「あ、ありがとうございます…」


フレイム、ユナの前ではデフォルト崩壊。早く結婚してくれないかなとモアがこっそり見ていたことは内緒である。


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