happy valentine day 4
作ってしまったチョコをどうして良いか分からず、机の上に投げてあった。赤いリボンはアリアの部屋で妙に目立つ。
「はぁ…」
本当にどうしよう、これ‥
「ため息つくと幸せ逃げるぞ」
突然背後から聞こえてきた声に、アリアは悲鳴をあげそうになった。が、その口を塞がれた。暴れようかと一瞬思ったが、冷静に考えてみると声に聞き覚えがある。
「騒ぐなよ、頼むから」
そう言って、彼は口から手を離した。クルッと振り返り、アリアは彼の胸を力一杯叩く。
「どこから入ったのよ!」
スティラクスは叩かれた胸を押さえて、ムッとしながら答えた。
「黒双に書類渡そうと思っただけだ。でも今乱入したら俺多分殺されるから。代わりに渡しといてくれないか?」
差し出された書類を、彼女は黙って受け取った。どうしよう、今なら、今なら…
「じゃあな」
「ま、待って!」
立ち去ろうとした彼の外套の裾を掴む。驚いて立ち止まったスティラクスが出ていかないうちにと、足を少しもつれさせながら机の上に投げてあった箱を手に取る。
「これ‥昨日、ベルに付き合わされて!!特にあげる人もいないから…」
自分でもわかるくらい顔が赤い自覚があり、目を合わせられない。下を向いたまま、箱を持つ手だけを彼につき出す。
「‥いいのか?」
「別にいらないなら、」
「いる」
彼の手が、アリアの手に触れた。そこでやっと彼女は自分の手が震えていたことに気付く。彼女の手をほどき、彼は箱を受け取った。
「ありがとよ、じゃあな」
最後まで、顔は見れなかった。
「‥進歩のないヤツラ」
ロネシアがボソッと呟いた。
「はい?」
アタナシアが首を傾げた。その彼女の手には紅茶のカップ。進歩がないのは自分もだなと思い、彼は苦笑いを浮かべた。
「なんでもないよ」