短編小説 | ナノ

happy valentine day 1




本編にまだ出てないキャラがいます!!
てかちょっとしたネタバレです!!
それでもいいぜ!!って人はお読み下さい。





2月の中頃、こんな寒い日は暖炉のある暖かな部屋でぬくぬく…とはいかず、書類整理にいそいそしているのはスティラクスである。ブラウン邸の居間を借りている理由は、ただ単に居心地が良いからだろう。その隣で医学書を開いているのはもちろんイザベルである。やたら分厚く古めかしい本を持ち出すのが億劫なのか、ここで勉強をしていた。

ふとイザベルか思い出したように呟いた。


「明日は聖ウァレンティヌスの祝日ですね」


その言葉に、スティラクスは書類から顔をあげる。カレンダーを見て、小さく頷いた。


「そうだな、バレンタイン……」


再び医学書に目を落とし、イザベルはバレンタインの内容を確認するように言った。


「女性がお世話になった男性にチョコレートを差し上げる日ですよね」


「お世話になった…いや…ん、間違いじゃないけどお世話になったってかお世話になるつもりの男性だと…」


「はい?」


「いや…それ誰に教えてもらった?」


「父上」


「‥過保護か」


バレンタインの意味をきちんと教えないところ、シリウスは過保護である。しかもそれを信じているイザベルもイザベルである。普通は気付くだろう。なぜ気付かないのかと疑問に思い、尋ねてみた。


「今まで誰にあげてた?」


「父上と叔父と、あと執事。他の人にはあげなくていいと父上が」


「うん、そうか。そうか」


シリウス様は過保護だな。


バレンタインの意味一つまともに教えない父親というのもどうかと思うが、仕方ないかとも思う。スティラクスから見たって、イザベルは十分かわいい。下手にチョコを渡したりしたら勘違いされるのが目に見えている。


「私、チョコレート作れないんですよね。溶かして固めるだけですのに」


ページを捲りながらイザベルが言った。その言葉にスティラクスは苦笑い。彼女の料理の腕が壊滅的なのは重々承知しているが、まさかチョコレートすら作れないとは思わなかった。


「壊滅的だな。誰かにあげたいのか?」


「黒双様…お世話になってますから」


その言葉に、スティラクスは微笑んだ。喜ぶだろうなアイツ、と貰う姿を想像してみる。おそらくチョコとして成立しないものを受け取っても、彼は文句を言いつつ喜んで食べるだろう。


「そうか。そうだな…アンナ夫人は今体調悪いし‥。そうだ、モア様にでも教えてもらえ。あの人は料理も被服もできる。てか多分今、チョコ作ってんじゃないか?」


「では尋ねてみます」


まともに料理が出来ない自覚はある。チョコレート一つまともに溶かして固められないことを知られるのは嫌だが、フリティアにチョコレートをあげたいという思いは強く、背に腹は代えられない。イザベルは本を片付けるとブラウン邸をあとにし、モアに会うため城へと向かった。


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