短編小説 | ナノ

〜8月14日





「あ」


イザベルが足を止める。


「どうした」

「玉ねぎ買い忘れました」

「‥荷物、持ってるから買って来い」

「はい」


が、10分経っても帰って来ない。


まさかまた拐われた?

そう思い八百屋へと向かえば、


「いいだろ別に」

「離して下さいませ」

「ちょっとそこで晩酌相手しろってだけだろ?」

「嫌です」

「は、下手に出りゃ調子乗りやがって」

「どこが下手ですか。傲慢極まりありません。ふざけないでお離し下さい!!」


‥ガラの悪い連中に絡まれていた。


周りは、どう止めるべきかオロオロするだけで誰も助けない。


「おい」

「あ?」


振り返った男たちの一人を、とりあえず殴り飛ばす。


「ウギャ!」

「てめえ何しやがる!!」

「やるか?」


彼が冷笑を浮かべて相手を挑発すれば、
単純な連中で、すぐに殴りかかって来た。

ああ、“黒双の騎士”相手に‥


「ギャ」

「グエ」

「ヴ…」


勝てるわけない。

あっという間に男たちを全員気絶させ、パンパンと手を払う。

それから、彼はイザベルに視線を移した。

「玉ねぎ買えたか」

「はい…」

「じゃあ帰るぞ」


言うなり、イザベルを抱えあげる。


「ちょ、」

「五月蝿い」


まだ何も言ってないのに。


去って行く騎士とその姫を見送り、街の人はため息をつき、思う。



今日も王都は平和だ…




next→

back
TOP


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -