(▼金造が酔ってるよ)



志摩家の四男と五男はセックスをする仲である。とはいえ普段はつまらないことで言い合いを繰り返し、二男にカミナリをくらうのがお決まりパターンなので、恋人のような甘い雰囲気とは無縁だった。

しかし、今回は少し状況が違う。廉造は部屋に入るや否やその光景を目の当たりにして固まった。

家庭用の照明にも眩しい金髪が畳に散らばっている。金造はぐでんぐでんに泥酔し、寝転がっていた。廉造が入ってきたことに気づくとゆらゆらと身体を起こし、「んあー、れんぞうら」などと締まりの無い口調でしゃべり出した。

「ちょお、れんぞう、こっちこっち」

「金兄飲み過ぎやって…うお!?」

おいでおいでと手招きをされてつい近づくと、強い力で腕を引かれ、金造の胸に勢いよく飛び込んだ。あまりの急展開に頭がついていかず混乱していると、頭の上から信じられない単語が降ってきた。

「廉造かあいいー…」

「はい!?え、もしもし金兄!?」

「うんー?」

金造は目の前にあるピンクまじりの弟の頭をくしゃくしゃと優しく撫で、愛しそうに頬擦りした。

「ぅ、わ」

耳を疑った。あの、自分に対してのみ傍若無人とも言える憎たらしい五つ上の兄が、まるで別人のような振る舞いである。

「あーほんまにかわええ」

「うっ嘘言うなや」

「うそやないわドアホ。ほんまはいっつもかわいくてかわいくてしゃあないんやぞお」

爆弾発言をして額に手をやり、ちゅっと軽く口付けた。

「大きゅうなったなー昔はこんな小っこかったくせに早いわー。俺なんか背ぇ抜かされてもうて」

とうとう親戚や近所のおばさんみたいなことまで言い出し、全身を撫でくり回す。

「ちょ、お、ッア!」

その手が胸の飾りに触れたとき、甲高い声が洩れた。金造は反応を面白がって、弱く強くと緩急をつけて摘まんだり指先で弾いたり軽く食んだりと好き勝手に弄くる。

「あ、ぁあ、あ、」

廉造は背中をのけ反らせるが、すぐに支えられるため二人の距離は近いままだった。そのまま手が下に伸びて、中心を握られるといよいよ声を抑えるのが難しくなってきた。

「んあああ…!」

「ああ〜声もかわいらしなあ」

すっかりメロメロ状態だが、動かす速度は衰えず、確実に肉棒を追いつめていく。邪魔な衣類は下着ごと乱暴に取り払い、程なくして狙いを後ろの秘孔に定めた。「もっと聞かせえ」と囁きながらそこへ指を這わすと、廉造はそれだけでトロリと先走りをこぼした。

「こっちも慣らさんとな」

金造は見せつけるように自らの指を厭らしくねぶって、ゆっくりと一本を侵入させた。

「…んン…ッは…っ」

「なんや随分余裕やで。もういっこいけるな」

中の具合から判断し、早々に本数を増やして遠慮無しに動かし始めた。ぐちゅぐちゅと派手な音をさせるくらい充分に解れてきたところで、ひときわ敏感なしこりを押されて悲鳴が上がる。

「ひいッ、あ!ぁ、あう、や…っ」

指を抜いた金造は悩ましげにため息をつき、慌ただしく性器を当てがった。

「も…あかん、かわええ。かわいすぎる、廉造、ええやんな?ここ、入れてもええ?なあ、」

こんなにも切羽詰まった兄を見るのは初めてだった。いつもは悪態の一つ二つは当たり前なのに、仔犬の様な瞳で懇願してくる姿が新鮮で目眩がする。

「え、ぇから、早く…っ―ああッ!!」

返事を聞き終わる前に、熱の塊が下腹部を圧迫した。

「ぁ、はっあ」

「ッ廉造、すきや…!チビの頃から、ずっと、いちばん、お前が好きや」

「あっ、あっ!、金兄っ、俺もや、ぁ」





二人は朝方になっても互いの気持ちを確かめ合っていた。

end
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