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「いい加減にしろテメェ!音無にべったり張り付きやがって!」
「僕が音無さんと共にあるのは当たり前の事だ!愚民などにつべこべ言われる筋合いは無い!」
いつものように校長室には日向と直井のいがみ合う声が響く。
連日続く公害に、ゆりを始めとするSSSのメンバーは頭を抱えていた。
「音無くん・・・貴方一人に特別なオペレーションをやってもらうわ。」
いつもの席でにっこりと音無に笑みを向けるゆりだが、その額には筋が浮かんでいる。
「今すぐこの二人を黙らせるか殺すかしなさい飼い主さん。じゃなきゃ私が殺るわよ?」
死なねぇだろ。なんてお決まりのギャグが出てこない程その目は本気だった。
「あー・・・日向、直井、とりあえず出るぞ。」
二人の襟首を掴んで連れ出す。このままでは三人とも床に転がる羽目になってしまう。
「って、ちょ・・・!どこ行くんだよ!」
「音無さん!僕はそこの頭の軽い単細胞と違ってお手を煩わせずとも言ってくだされば・・・!!」
退場まで尚も五月蝿い二人を無理矢理傍の予備教室に連れて行く。
「はぁ・・・日向、直井。お前らほんといい加減にしろよ。」
自分の事で喧嘩されるのは居心地が悪いし、ギスギスした空気中にいるのは周りだって嫌だろう。
だがなんと言えばいいのか音無には見つからなかった。
”俺のために争うな”?どこの悲劇のヒロインだ。
”それ以上喧嘩するなら絶交だ”とか?小学生か。
考えれば考えるほどおかしな方向に向かっている気がする。
「うーん・・・・・・よし!お前ら、話し合って仲直りするまでこの教室出てくんな。」
そして悩んだ音無は、本人達に丸投げする事にした。
「はあぁ?!嘘だろ音無ぃ!」
「そんな、こんな愚民と二人きりになったら僕の高貴な魂が汚れてしまいます!」
「キモいこと言ってんじゃねぇよ!!」
音無はさらに言い合いをする二人を置いて、さっさと扉に向かった。
「いいか。少しで良いからお互い歩み寄る事!じゃなきゃほんとにお前ら知らないからな!」
「あぁ!待ってください音無さん!!」
「おい音無!」
勢い良く扉がぴしゃんと閉じられ、後には直井と日向が捨てられた仔犬のような目で音無の行った先を見つめていた。
「・・・貴様のせいだぞ・・・音無さんがここまでなさったのは貴様がしつこく僕に突っかかてきたからだ。」
直井は日向を振り返ると、鋭く睨みつける。
「お前に言われたくねーんだよ!大体音無にしつこくストーカーしてるお前が悪いんだろうが!!」
「ストーカーだと?!貴様こそ口を開けば音無さんばかりではないか!会議中もずっと見ているだろう!ストーカーは貴様の方だ!」
「はぁ?!お前がずっと張り付いてるから音無の心配してたんだよ!お前なんかこないだ机でうたた寝してた時寝言で音無さんって呟いてたぜ?!夢の中まで音無か!!」
喋り続けて、二人はにらみ合い、同時に勢いよく顔を逸らす。
と、そこでふと直井が真顔になった。
「ちょっと待て・・・いつ僕が机でうたた寝などした。」
「はぁ?音無が本読んでる横で邪魔にならないようにって大人しくしてる内に寝てたろ。」
日向の答えにさらに直井はいぶかし気な顔になる。
「あの時部屋には僕と音無さんしかいなかっただろう。」
「・・・お前が寝てる間に部屋入ったけど、すぐ出たんだよ。」
直井が問い詰めるほど、日向はばつの悪い様子で目を逸らした。
「何故だ。」
日向なら直井が寝ている所に出くわしたなら、からかうなり、いつもの仕返しでもするはずだ。
「・・・お前が寝てたから・・・。」
日向の顔が赤くなるのを直井は訝しげに見つめた。
「・・・僕が音無さんと呟いたと言ったな。本当に聞こえたのか?」
すぐ出たならば人の寝言などそうそう聞こえるものでは無い。
訊ねると日向はため息をつき、小さく悪態をついて顔を覆った。
「・・・ぁー・・・見てたんだよ・・・。」
「はぁ?」
「お前が音無の名前呼ぶまで・・・寝顔・・・。」
状況を把握すると共に、直井の顔もみるみる赤くなってゆく。
「・・・っな・・・勝手に見るな!!」
日向は目をすがめて深々とため息をついた。
「そうしてりゃ可愛いのによ。」
「はぁ?!何がだ!!」
「あーもう。黙ってりゃ綺麗な顔してっから横座って見てたんだよ!」
「・・・・・・っ。」
直井は声も出ずに困ったようにただ日向を見つめた。
「ぶはっ!お前のそんな顔初めて見たわ!」
けらけらと笑いだした日向に直井は一瞬呆気に取られ、すぐに顔を真っ赤にして怒鳴る。
「貴様嘘をついたのか?!」
「いーや、残念ながらほんとだ。」
日向はため息をつき、ぐりぐりと直井の頭を帽子の上から撫でた。
本来ならすぐに払いのけるその手を、何故か直井は戸惑うだけで、避けられなかった。
「たまにさー・・・考えるんだよなぁ。あの時お前を抱き締めたのが、音無じゃなく俺だったらって・・・。」
「何を・・・言って・・・。」
日向は直井の帽子を落とし、猫のような柔らかい髪をくしゃりと撫でる。
反射的に直井も目を細めて身をすくめ、本当に猫のような反応を返した。
「俺だってお前を肯定してやれたのに・・・そしたら・・・お前が好きになったのは俺だったのかな・・・。」
直井に言っているのか自分に言っているのか、どちらともつかないような顔で日向は笑った。
直井はその言葉をどこかで喜んでいる自分に気付き、動揺した。
どうすれば良いのか分からなかったが、ただいつもと違った日向の歪んだ笑顔に居たたまれなくなり、直井は思わずその両頬を摘まんで引っ張った。
「いっひぇ!」
「貴様が音無さんのように僕を救えるはずが無いだろう!あれは音無さんだから出来た事だ!貴様になど代わりが務まるか!!」
「いひゃいっへ!」
直井はべしべしと手を叩かれ、頬を放すが、そのままその手を日向の肩に乗せてうつむいた。
「大体貴様が音無さんのように高見の存在になってしまったら、誰が毎日僕と喧嘩をしていがみ合うんだ・・・今みたいに、思った事をそのままぶつけられる相手など・・・僕は・・・他には、いない。」
消え入りそうな言葉だったが、ちゃんと聞こえたのか、頭の上で日向が笑ったのが分かった。
「・・・そうか。俺は俺で必要なのか・・・。なら仕方ないよな。音無が好きでも・・・。」
その言葉に直井は肩に置いていた手を滑らせ、日向の襟首を掴む。
「さっきから聞いていればその好きというのは何だ!僕は音無さんを好きなどと言う浮わついた感情で見ているのでは無い!崇拝しているのだ!僕にとって音無さんは世界の全てだからな。」
「え・・・お前、音無の事好きなんじゃないのか・・・?」
日向の間抜けな顔が、直井に近づく。
思わず少し顔を仰け反らせ、直井が眉を潜めると、日向は直井の手を自分の襟から外し、そのまま握り込んだ。
「はぁ?・・・貴様の言っているのは肉欲の含む情の事だろう?そりゃあ僕は音無さんを崇めているが、あの方をそんな穢らわしい目で見るわけが無いだろう。」
日向は急に考え込むと、何かに気づいたようにハッとした。
「ん?何でオレ喜んでんだ・・・?!」
「意味がわからないがとりあえず手を離せ。」
直井の声が聞こえていないかのようにまた日向は考え込む。
「・・・考えてみりゃお前が生徒会にいる時からよく見てたんだよなぁ・・・。あれ・・・?」
ぶつぶつと考え込む様は正直気持ちが悪い。
直井は顔をひきつらせて様子を窺う。
「・・・あ、俺お前の事好きなのか。」
日向が顔を上げて唐突な言葉を吐き出すのと、教室の扉が開いたのは同時だった。
音無は手を握りあって立っている二人に目を丸くする。
「あー・・・そこまで仲良くならなくても良かったんだが・・・。」
冷や汗をかいて目をそらす音無に、直井は真っ赤になって日向を突き飛ばした。
「うぉわ!!」
派手な音を立てて机をなぎ倒し、日向が飛ぶ。
「ち、ち違うんです音無さん!これはあの愚民が勝手に!!」
音無はしがみついて必死に否定する直井を宥めながら、日向に冷めた視線を送る。
「あー・・・日向、お前やっぱり・・・コレなのか??」
お決まりの冗談にも今は正面から否定できない。
「・・・はは、かも・・・。」
苦笑して頭をかく日向と、真っ赤な顔で死ね失せろ僕を見るなと喚く直井。
それを遠い目で見ながら音無は、もしかすると自分はさらに問題を増やしたのではないかと頭を抱えた。
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日向×直井。略してにっちょく。←
メジャーかどうかは知りませんが、このサイトでは日直呼びで突き進みます。
音無が素敵に皆のお母さんをしてくれてますね。
音無愛してる。
余りにも日直が無いので先に上げましたが、次は音無受頑張ります。
ではではー。
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