※死ネタ




「臨也、指輪は外しておいた方がいいんじゃない?」

新羅の言葉に、臨也は自分の手元に視線を落とした。

「ああ……、そうだね」

確かに葬式の場にこの銀色の装飾品は少しそぐわないかもしれない。薄く微笑んで、臨也は両指のシルバーリングを外した。

「当たり前だけど、運び屋は来ないんだ?」
「…それを言わないで欲しいな。一番悔しがってるのはセルティなんだから」

親友だったからね、と寂しそうに新羅がつぶやく。
フルフェイスの都市伝説は指輪以上にこの場に似合わないだろう。嘆いているであろう首のない運び屋を想像して、臨也はほんの少しだけざまあみろと思った。

どれだけ彼に心を許されていても、君は最後の別れを惜しむことさえできないんだ。

棺が開かれて、彼の寝顔が目に入る。
綺麗だな、と思った。
いつもつりあがった眉は穏やかに弧を描いているし、ギラギラと怒りに燃える瞳はふせられて、まつげの長さが際立っている。
臨也はその寝顔をじっと見つめる。

いつだったか、一度だけ眠る彼を見たことがある。
夕日が差し込む教室で、臨也はずっとその顔を眺めていた。
彼が目を覚ますまで、ずっと。

あのときよりも少し顔つきが大人になったが、それでも変わらない安らかな寝顔に、目を細める。

強く、気高く、美しい人。
平和島静雄。

化け物は、あっけなく、死んだ。

新羅の後に続いて、顔の横に菊を添える。金色の髪に白い肌が際だって、ぞっとするほど綺麗だ。
そっと手を伸ばして、その透き通るような頬をなぞる。ここに青筋が走ることはもうないのだろう。
眉間にシワが寄ることも、あの強い眼光が臨也を刺すことも。
強靭な肉体とは対極に、その繊細な心が傷つき震えることも、もう二度と。

臨也は固く握られた両手をゆっくり外していく。
その左手の薬指にシルバーリングを通して、微笑んだ。

「さよなら、シズちゃん」


俺が追いつくまで、少しだけ待っててよ。


























刹那のバイバイ

(すぐに追いかけるから)