見えたその空が、ひどく大きくて、やけに綺麗で。
「なにしてんのシズちゃん、新しい遊び?」
完成されたような青空は、臨也の顔が入り込んできたことによって隠されてしまった。静雄は舌打ちをする。
「うぜぇ……」
臨也を見ないように腕で視界を隠すが、起き上がりはしない。
もしかしたら少なからず疲れているのかもしれなかった。連日のケンカ続きは身体だけではなく精神的にも負担だ。
「お疲れなのかな?」
そんな静雄の心情を読んだのか、臨也は楽し気な声を出してくる。静雄は更に舌打ちをした。さっきまで割といい気分だったのに、何もかも台なしにされた気分だ。
「シズちゃんでも疲れることあるんだねぇ」
「……うるせぇ、どっか行きやがれ」
追い払うように投げやりに手をやるが、臨也は動こうとしない。
「ねぇ、なんでこんなところで倒れてるの?」
その質問に静雄は顔をしかめた。
こんなところ、というのはグランドのことだろう。
倒れているからといって、べつに深手を負わされたわけではない。平和島静雄という存在にとって、そんなことはそうそう有り得ない。
今日は帰り道に待ち伏せされていて、そして何事もなくそれを撃退。その後にふと、出されていた課題を学校に忘れてきたことに気がついた。特に重要なものでもなかったが、うっすらと傷のついた顔や腕を家族に見られるのも少し憚られる。面倒だと思いながらも、時間潰しもかねて学校に戻り、そして、そこで、転んだ。
「……………」
疲れていたのだろう。連日のケンカ続きで、心も身体も。
舌打ちすることにも疲れて、静雄はごろりと仰向けになった。
見上げた空は、どこまでも青くて。
突き抜けるように澄んだ空の広さに、静雄は眩暈を覚えた。
空があまりにも大きいから、自分がひどくちっぽけに見える。なんて、ありきたりな話。
隣にいる男に言ったら、きっと笑われてしまうだろう。
「………シズちゃん?」
窺うように発せられた臨也の声から顔を背ける。
「どっか行け」
「……………」
ジャリッと音がして、臨也が隣に座ったのが分かった。
「おい、」
どっか行けって言ったろと再度口を開こうとした静雄の髪に、臨也の手が触れる。
その突然の行動に脳がうまく順応できなくて、静雄は戸惑ってしまう。臨也の考えてることはいつもよく理解できない。理解したいとも思わないが。
「……おい、」
「シズちゃん」
しばらく髪を指ですいた後で、臨也は静雄の頭をポンポンと撫でた。
「お疲れさま」
「……………」
その優しい手つきに、不覚にも泣きそうになってしまった、なんて、やっぱり自分は疲れているのだろう。
目を覆う腕に力を入れた。
Sky Blue
(君は君のままでいいんだよ)
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